ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『エイリアン4』(1997) ジャン=ピエール・ジュネ:監督

 20世紀フォックス社は『エイリアン3』のあと、『トイ・ストーリー』の脚本を書いたジョス・ウェドンに次作の脚本を依頼した。その脚本ではまだ次作があり、最終的に舞台は地球になる予定だったが、それは映画化されていない。
 当初は新作の主人公は『2』で救出された少女のニュートになる予定だったが(なぜならリプリーは『3』のラストで死んだから)、プロデューサーらは新作もリプリーが主人公であることを望んだ。ジョス・ウェドンは苦労して脚本をリライトし、その脚本はシガニー・ウィーバーも承認した。
 当初、監督は『トレインスポッティング』のダニー・ボイルが候補に挙がった。次にピーター・ジャクソンが候補になったが、どちらの監督もこれを断ったのだった。
 フォックス社は次に『ユージュアル・サスペクツ』のブライアン・シンガーを推したが、プロデューサーらはフランスのジャン=ピエール・ジュネの作品が気に入り、彼に監督を依頼した。ちょうど次作『アメリ』の脚本を書き上げたところだったジャン=ピエール・ジュネは、「エイリアン」にまだ次作があり、その監督に自分が選ばれたことに驚いたが、フランスのスタッフやキャストを引き連れて、この『エイリアン4』(英語題「Alien: Resurrection」)を引き受けるのだった。結果として、ジョス・ウェドンの脚本も相当書き換えたらしいが。
 ジャン=ピエール・ジュネは、これまでの作品ではマルク・キャロと組んで監督してきたのだったが、今回マルク・キャロはしばらくハリウッドに滞在したあとハリウッドを嫌い、数枚のデザイン画を残してフランスへ帰ってしまったのだった。

 今作は前作『3』より200年後が舞台ということにされ(いや、ジュネ監督は「どこが200年後やねん」という「逆行した世界」をみせてくれるけれども)、リプリーは残されていた彼女の血液から、「エイリアン」と共に「クローン」としてつくられるのだった。したがって新しいリプリーは『3』までのリプリーと同一人物ではないが、エイリアンとのより強い「精神的な親和性」を保持しており、そのことが新しいドラマを生むのだ(このことを、シガニー・ウィーバーも気に入ったらしい)。
 今回の舞台となる宇宙船は「オーリガ」という科学実験用の宇宙船で、ここでリプリーのクローンから分離された「エイリアン」を研究している。すでに複数のエイリアンが宇宙船内で管理されていて、さらに数を増やすために「生きた人間」を輸送して来た「ベティ号」という宇宙貨物船が6人のクルーと共に「オーリガ」へやって来るのだ。
 ここで、リプリーの「知恵」を遺伝的に受け継いだらしいエイリアンらは「檻」を脱出、宇宙船内の科学者や軍人らを次々に虐殺して行くのだ。「エイリアン」の存在を知った「ベティ号」のクルーらは、生き残ったわずかな「オーリガ」の乗組員、そしてリプリーと共に「オーリガ」から脱出しようとするのであった。しかし数を増したエイリアンらはしっかりと追ってくるし、奥の部屋では進化した女王エイリアンが「リプリーの遺伝子を色濃く反映した」新しいエイリアン「ニューボーン」を産むのであった。

 う~ん、映画の前半はけっこうジュネ監督の「遊び」みたいなシーンも多かったし、そのあとは『3』ばりのバンバン撃ちまくる「アクション映画」っぽくなってしまう。ああ、わたしはホンッとに「アクション映画」が嫌いなんだな、ということがよくわかった前半の流れで、けっこう観ていてウンザリしてしまった。
 それが「これ、やっぱり面白いじゃん!」となったのは、「ベティ号」へと逃走する連中が、「オーリガ」内の水没した個所を泳いで渡るあたりからで、ここではもう「武器」もあんまり使えなくなったからか、追って泳いで来るエイリアンが迫力あったからか、さいしょの『エイリアン』のように「逃げる」ということが前面に出てきたからだろうか。ちなみにこの「ベティ号」のクルー6人は、第一作『エイリアン』の登場人物をなぞるようなところもあったわけだ。生き残った女性クルーのコール(ウィノナ・ライダー)が実は「ロボット」だったりもする。
 終盤、ついに脱出したと思った「ベティ号」だったけれども、やはり第一作のようにエイリアン(「ニューボーン」)が乗り込んで来ていたわけで、ここでも第一作をなぞるような展開。

 実はこの「ニューボーン」というエイリアン、先に書いたように「リプリーの遺伝子」を多く含んでいたわけで、産まれてすぐに母親の「女王エイリアン」を殺してしまうし、リプリーのことを「母親」と思って愛情を示したりもするのだ。それでその造形がかなり人間的な部分も強く、特にその眼が寂しそうに見えてそれだけで泣けるのだが、ついに最後にリプリーに倒されて宇宙船の外に排出されてしまうときには、わたしの目には涙が浮かんでしまったのだった。

 この終盤の、「クローン」としてのリプリー、そして「ロボット」であるコール、それからやはり「クローン」であった「ニューボーン」との関係が、けっこうジ~ンと心に沁みてしまったのだった。
 わたしは、この作品が「エイリアン」の物語のラストとして、「これでいいのではないか」と、気に入ってしまったのだった(まだまだ、これから『エイリアン5』がつくられるのかもしれないが)。あとやはり、シリーズの4本を連続して観て、「シガニー・ウィーバーという俳優は、このシリーズをまとめる素晴らしい俳優さんなのだな」と思ったのだった。
 あと、宇宙船「オーリガ」の司令官を演じていたダン・ヘダヤ、観る前から「聞いたことある名前の人だな」と思っていたが、始まってみたら、あのコーエン兄弟のデビュー作『ブラッド・シンプル』でいや~な旦那を演じてた方だった。それから、やはり「オーリガ」内でエイリアンの研究をしていた「卑劣」なレン博士、彼を演じていたのはJ・E・フリーマンという役者さんで、やはりコーエン兄弟の『ミラーズ・クロッシング』で、いい敵役を演じていた方だ。こ~んなところで、コーエン兄弟ゆかりの役者さん2人に出会うというのも意外だった。