ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ガラスの城』(1950) ルネ・クレマン:監督

 原作はヴィッキー・バウムという人によるもので、彼女は『グランド・ホテル』の原作者でもあり、10以上の作品がハリウッドで映画化されたという。この『ガラスの城』もベストセラーとなり、日本でも翻訳が出ていたそうだ。
 主演はミシェル・モルガンジャン・マレー。二人とも当時のフランスの大スターだった。そして面白いのは、この映画のエキストラでジャン=ピエール・メルヴィル、そしてジャック・リヴェットジャン=リュック・ゴダール という、のちの大監督らが出ていること。メルヴィルはタクシーの運転手役で、リヴェットとゴダールとはパリ東駅にいた旅行者役らしい(わたしは観終わってからこういう情報を得たので、画面での確認は取れていないけれども)。

 いきなりの、エヴリーヌ(ミシェル・モルガン)とレミ(ジャン・マレー)とのラブシーンから始まる。二人の顔のアップが多い。
 どうやら場所はイタリアのコモ湖畔らしく、エヴリーヌはベルンで判事の仕事に従事している夫のローランの目を盗んで、パリから来ているレミとの情事を楽しんでいるらしい。
 二人は別れ、エヴリーヌはベルンへ戻るけれどもレミのことが忘れられないようだ。ローランは姑殺しで告発されている妻の裁判で忙しいが、その事件、ローランの考えでは告発された妻は夫をかばうために「自分が犯人」としているようだという。
 パリに戻ったレミは、気心の知れた女友だちのマリオンと会い、コモ湖畔でのエヴリーヌとの話をする(わたしはマリオンはレミの恋人だと思っていたのだが、そこまでの仲ではないようだった)。ここまで見た感じでは、レミという男は「遊び人」というか、とてもエヴリーヌとは本気というわけでもないようにみえる。そんなレミはベルンのエヴリーヌに電話してパリへと誘う。
 喜んだエヴリーンはローランに嘘をついてパリへと出発するが、パリに着いてみると自分が軽率だったと思い、引き返そうとするが列車に間に合わない。
 けっきょくレミと会ったエヴリーンは愛を確かめ、レミもまた自分がエヴリーンを愛していることに気づくのか。
 次のベルン行きの列車が発つ時間まで、二人はパリの町を回ったり、レミの宿泊するホテルで愛を確かめ合ったりするのだが、エヴリーンはギリギリにベルン行きの列車に乗り遅れてしまう。何とかベルンへ飛ぶ飛行機のチケットを手に入れ、エヴリーンは飛行機に搭乗するのだが。

 う~ん、こういうの、わたしにはわかりません。そもそもこのレミという男、めっちゃ軽薄そうで、エヴリーンが夫を忘れて夢中になるような男じゃないだろうと思ってしまう。そして、コモ湖畔のエヴリーンの友だちは、エヴリーンとレミとの逢瀬を知っていながら「どうぞどうぞ」みたいな感じ。なんでエヴリーンにブレーキをかけさせないのか、わたしはわかんないのね(おそらくわたしは、わたしが思っている以上にモラリストなんだろうと思った)。
 この映画でいちばんマトモだったのは、レミの女友だちのマリオンじゃないのかな。レミに「あなたは女を愛することはできない」とか辛辣なことも言うし。
 いろんな、「贈り物の花」のこととか出てきたと思ったけれども、わたしは忘れてしまったな。というか、今日はこういう映画を観る気分ではなかった「わたし」なのだった。

 あと、ラストにエヴリーンが飛行機に乗る前に、「フラッシュバック」ではなくって「フラッシュフォワード」として、実はエヴリーンの乗る飛行機は墜落し、エヴリーンは死ぬのだということが先に描かれる。観客は彼女の運命を知っている、という感じ。