ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『オールド・ボーイ』(2003) パク・チャヌク:監督

 パク・チャヌク監督の作品というと、前に『渇き』を観たのかな。この『オールド・ボーイ』はのちにアメリカでスパイク・リー監督によってリメイクされたらしいが、この作品自体、世界各地の映画祭で受賞しまくったということ。原作は日本のコミックなのらしい。

 主人公のオ・デスはあるとき不意に拉致され、それなりに自由のきく(テレビを見ることもできる)密室で長い長いあいだ監禁される。監禁されている間に妻は殺害され、その犯人は彼だとされている。拉致されたときにオ・デスのまだ幼かった娘は誕生日で、彼は誕生日のプレゼントを買っていたのだが。
 密室で身体を鍛えていたオ・デスは拉致されて15年後に不意に解放される。監禁中に毎日食べた餃子の味の記憶から、その餃子店を突き止め、彼を監禁した犯人へと一歩近づくのだが。

 オ・デスは拉致犯人への「復讐」の意志が強いのだが、実は彼を拉致した犯人もまた、オ・デスへの「復讐」の壮大な計画があるのだった‥‥。

 まあ、こういう「主人公の行動」もすべて計画された通りの展開であり、「釈迦の手のひらの孫悟空」状態なのだ、お前が愛する女もすべてこちらの思惑通り、というのは別に目新しいものでもなく、古くはジョン・ル・カレ原作でリチャード・バートンがクールだった『寒い国から帰ったスパイ』もあるし、文学でいえばあの『一九八四年』だってそういうことだ。
 この『オールド・ボーイ』ではそこを「もうひとひねり」はしてあるのだけれども、それは『寒い国から帰ったスパイ』や『一九八四年』にあった「非情な権力による不条理な罠」というのではなく、ただ「復讐」の輪の連なり、というところがスケールが小さいというか、チープな感覚を受ける。もちろん、ここで「復讐」しようとする男の意志が「つまらない」とは言わないが、そこで「催眠術」かよ!というのは、脚本としては落第だろうとわたしは思う。正直言って、ラストまで観たわたしは、「な~んだ!」という落胆を拭い去ることは出来なかった。

 もちろん、映画として、スタイリッシュな「カッコいい」演出は随所に見られ、特に前半のユーモア感覚も好きなのだけれども、全体を覆う中途半端な「ハイテク」さが気になる。もちろん、公開から18年も経ってしまうとそういう感想も出て来るのだが、そのあたりをクリアできるような「先を行く」演出を期待したかったところだ(たとえば、デヴィッド・フィンチャー監督の『ファイト・クラブ』など、今観てもそういう「中途半端さ」は感じさせないのではないのか)。

 観終わってみれば、残念ながら「そこまでにも楽しめた作品ではなかったな」というのが、わたしの感想であった。