- 作者: グスタフ・クリムト,ゴットフリート・フリードゥル
- 出版社/メーカー: タッシェン・ジャパン
- 発売日: 2003
- メディア: 単行本
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この本の出版元は「TASCHEN」。著者のゴットフリート・フリードゥルという人がどういう人なのか、まるで書かれていないし、普通に翻訳書にあるような解説もない(そもそも、翻訳者のことがまたわからない)。いちおうこの方の名前でググってみると、この方のHPが出てくる。経歴を(翻訳で)みると、ウィーン大学で美術史と考古学を学び、今は「博物館学」の講師としてウィーン大学やバーゼル大学で教え、博物館のスタッフをやったりもしているみたい。
実はこういうことは読み終わったあとになって調べたことだけれども、読み始めたときは「クリムトの経歴をちゃっちゃっと知ることができればいい」ぐらいの軽い気もちだった。しかし、この本は読んでいるうちにだんだんと面白くなってきた。「面白い」というのは、この本が単にクリムトの業績、作品を賛美するものではなく、かなり痛烈にクリムトに対して否定的な意見をも含めて書いていることであり、ひとつの「論文」として奥深い書物、という感想を持った。特にクリムトの素描から彼の女性観を批判しながら、彼の作品全般にわたる解釈を展開するあたりは、とても優れているという感想を持った(この本については、「クリムト展」を観たときにまた触れようかと思っている)。
印刷も美しく、画集としてもすばらしい書物。「TASCHEN」はかつては国内でこの本のような美術書を刊行しつづけていたのだけれども、今は日本からは撤退してしまっているらしい。