ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

「ゼロ・グラビティ」(2013) アルフォンソ・キュアロン:監督 エマニュエル・ルベツキ:撮影

 けっきょく、前に観て昔の「ワニ狩り連絡帳」に書いた以上の感想もあるわけでもなく、その「<旧>ワニ狩り連絡帳」に書いたことを再録するだけ。ま、この<新しい>スター・チャイルドのお父さんは、やはりジョージ・クルーニーなのだろうけれども。

 ただひたすら「宇宙からのサヴァイヴァル(帰還)」一点だけの展開で、ほぼすべてのシーンは大気圏外の宇宙。出演はサンドラ・ブロックジョージ・クルーニーのふたりだけ。というか、ほぼサンドラ・ブロックの独演。で、じゃあ彼女が助かるかどうかというサスペンスだけの映画なのかというと、これが実に豊穣な中身を持っていておどろかされてしまうわけだし、やはりとにかくはサスペンスとしての見事な展開に見入ってしまう。
 とにかくは冒頭から、「いったいこれはどうやって撮影しているのか」という、宇宙飛行士の宇宙遊泳のシーンが続くのだけれども、これが自在に動き回るカメラというおどろき以上に、ものすごい長回しなのである。偶然どのくらいの時間の長回しなのか測るようなことをしてしまったのだけれども、これが十二分くらい続いていた。そして、この映像がものすごく美しい。背景に地球の姿が映り込むことで、その地球の美しさによるところもあるけれども、宇宙船も飛行士も、すべてが美しく撮られている印象がある。まずはこのあたりで、きのう観た「インターステラー」には余裕で勝っているだろう。
 そしてそしてこの映画、これもまた「2001年宇宙の旅」からのリファレンスをあれこれと感じ取れてしまう。
 「2001年宇宙の旅」では、大きな宇宙船を「精子」とみなしたような「受精」の旅(木星卵子?)、という隠喩が感じられたわけだけれども、この「ゼロ・グラビティ」でも、小型宇宙船を「胎内」とする「誕生」の旅、という隠喩があることはまちがいない。宇宙飛行士は「胎児」であり、その胎内である宇宙船とは「へその緒」を思わせるケーブルでつながっているわけであり、まさにそのケーブルこそが、宇宙飛行士の命綱でもある。サンドラ・ブロックが小型宇宙船内に退避して宇宙服を脱ぎ捨て、そこでまさに無重力状態の中で胎児のように身体を丸くするショットもあり、ここのシーンもとても印象的だった。
 サンドラ・ブロックの熱演も特筆もので、もう熟年といっていいだろう彼女の長いキャリアの中で、ここに来て最高の演技を見せてくれたのではないかという気もしてしまう。ほんとうはそんなに意識して観るような役者さんではなかったのだけれども、もうこの作品で彼女を観る目が変わってしまうような気がする。
 この映画、おそらくは過去に観たことがあるんじゃないかとこの日記で検索してみると、なんとなんと、今年の一月に映画館で(おそらくは3Dで)観ていることがわかった。‥‥けっこう、つまりは同じ人間が観て書いているのだから同じようなことを書いていて、そこまではわたしも退化していないように思えて安心した。しかししかし、この映画を映画館で観た記憶などこれっぽっちも残っていなくって、どのシーンでも「観たことあるかも」とひっかかりをおぼえることもなかった。今回こうやって録画で観て、「ああ、この映画、映画館の大きな画面で観たかったなあ」などと思ったものだったけれども、ちゃんとそういうことをやっていたわけだ。あらためて、失せてしまった記憶のことを残念に思うだけ。
 わたしの中では、「2001年宇宙の旅」>「ゼロ・グラビティ」>>>>>「インターステラー」、という感じかな。