ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ドライブアウェイ・ドールズ』(2024) トリシア・クック:脚本・製作 イーサン・コーエン:脚本・監督・製作

   

 「コーエン兄弟」としてジョエル・コーエンと共同で映画を撮って来たイーサン・コーエンは、2018年の『バスターのバラード』を最後に「映画を撮ることはもうやめる」とかの話で、じっさいジョエル・コーエンは次の『マクベス』(2021)を単独で監督し、「あらら、イーサン・コーエンは本当に映画を撮るのをやめちゃったんだね」と思っていたのだけれども、不意にこ~んな映画がやって来た。

 脚本のトリシア・クックというのはイーサン・コーエンの夫人で、この『ドライブアウェイ・ドールズ』の構想は彼女単独でずいぶんと以前に進行していたものらしい。さいしょはアリソン・アンダースが監督にあたるとされていたらしいが、2022年にイーサン・コーエンが監督するとされた。
 この映画が現実化したのはCOVIC-19のパンデミックでたっぷり時間がとれたからといい、じっさいにはイーサン・コーエンとトリシア・クックとの共同監督作品なのだという。
 アメリカ版のWikipediaイーサン・コーエンは、この作品のトーンは自分が十代の頃に観た1970年代初期の「Exploitation Romance Films」に似ていると述べている。この「Exploitation」というのは日本でいう「B級映画」的なニュアンスみたいだけれども、その英語版Wikipediaで「Exploitation film」というのを読むと、とっても面白いのだ。

 以上がこの映画の「データ的側面」だけれども、ストーリー的には「自分たちの乗るクルマに、ヤバい奴らが探すヤバいモノが隠されていたのだ」という、よくあるといえばよくあるお話。
 出演は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に出演していて「わたしのお気に入り」になったマーガレット・クアリーと、見たからにインド系の血をひいているジェラルディン・ヴィスワナサンという女優さん。
 いちおう日本でも「PG-12」となっているんだけれども、これはたしかに「ヤバい」というか、「お下劣」。「そ~んなもん画面いっぱいにでっかく映していいのかよ!」ってなモノが出てくるわけで、いや、「13歳でも見ちゃいかんだろう」って気がする。
 しかし、はっきりいって、「いったいどこが面白いのよ?」ってな作品で、いくらコメディでも奥行きのない脚本は「いかがなものだろうかね?」とは思うのだった(「そんなオチかよ!」っていうことも言いたいが)。なんだかアリバイのようにヘンリー・ジェイムズを読んでいたというのも、スノッブな香りがしたし。
 映像的に何度も、いかにも70年代サイケ調の、原色がぐにゅぐにゅとうごめく映像があらわれるのだけれども、これもどうも意味不明である。まあ主演二人のおかげもあって「陽気さ」は伝わってくる作品だし、わたしはマーガレット・クアリーの元カノジョ役のビーニー・フェルドスタインという女優さんが気に入った(マット・ディモンは「こ~んな役で出ちゃっていいのだろうか?」というアホらしい役だった)。

 おそらくは、一ヶ月もしたらな~んも思い出せない映画じゃないかとは思うけれども、観ながら怒っていたわけではない。なお、この映画はイーサン・コーエンとトリシア・クックによる「レズビアンB級映画3部作」の第1作で、以降『Honey Don't!』、『Go Beavers』とつづくらしいのだ。ま、わたしは「あほらしい!」と思いながらも観に行くことだろうが。