ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『偽証』(1947) アンソニー・マン:監督

 アンソニー・マン監督の作品は、先月『午前2時の勇気』という作品を観たわけだけれども、今日はそれにつづいてのアンソニー・マン監督作品。ほんとうはタイトルから「法廷モノ」か?と思ったのだけれども、まったくそういうのではない、フィルム・ノワールもの。

 この作品、実際にあった冤罪事件が下敷きになっているらしく、いちおうこの作品でも無実の男がある強盗殺人事件の犯人とされ、逮捕されるのだけれども、それは2人の犯人の一人が重傷を負っていて、息を引き取るまぎわにその無実の男のことを犯人と「偽証」していることからのタイトルなのだろう。それでその「犯人とされた男」の姉が、弟の容疑を晴らすために事件に深入りして行くという話。

 美容室を経営するクララは、その美容室で隠れて非合法の賭場を開いているのだが、その賭場の上りを元締めに納めずにいただいてしまおうと、恋人のデューク・マーティンと組んで「狂言強盗」的な芝居を打とうとするが、美容室の従業員が騒いだために警官が来てしまい、デュークの相棒の男が撃たれてしまう。デュークはその警官をを射殺して逃亡、重傷の相棒に「おまえの仕事場の同僚とやったことにしろ」と言って、病院の前に彼を置いて逃走する。
 それで逮捕されたのがスティーブという若者で、運悪くアリバイを示すことができなかった。スティーブの姉のロージーは弟の無罪を信じ、その時点ではスティーブが犯人と思っているファーガソン刑事と行動するようになるのだ。

 この70分ぐらいの作品の中で、ぎっしりとストーリー展開が詰め込まれていて目まぐるしいのだが(前に観たアンソニー・マン監督の『午前2時の勇気』もまた、目まぐるしい作品だった)、それでもその中で、デュークのその性格の「悪党ぶり」は描かれるし、デュークとクララという悪党カップル、それに対してのロージーファーガソンカップルというものがあるけれど、デュークとクララとの関係がだんだんに壊れて行く(さいごにはクララはデュークに射殺されてしまう)のに対し、ロージーはデュークに誘惑されそうになったり、さいごまでファーガソンとの関係は進展を見せない。中盤には、ロージーとクララとのかなり本気(マジ)なキャットファイト・シーンもあって楽しませてくれるが。

 それでまずさいしょの見どことは、冒頭の強盗シーンの描写、撮影で、暗い部屋の中にうまく外からの明かりを取り入れ、まさに光と影の「表現主義」的な展開が堪能できる。
 わたしの見た感じ、「善玉」のロージーファーガソンよりも、「悪党」のデュークとクララの方が魅力的に思えたし、じっさいに、デューク・マーティンを演じているジョン・アイルランドは、この作品出演者の中ではいちばん人気があったようだ。

 アンソニー・マンの映画を観るのはこれで2本目だが、このフィルム・ノワールの時代、低予算、短い撮影期間で製作し、それなりの評価をされていたようで、のちにジェームズ・スチュアートと組んで西部劇の名作をつくるようになるのだ。
 「Amazon Prime Video」では、まだけっこうな数のアンソニー・マン監督作品が観られるようなので、もうちょっと観てみようかと思う。