ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ベイビー・ドライバー』(2017) エドガー・ライト:脚本・監督

 この映画は公開当時、映画館で観たけれども、映画のファースト・シーンで主人公が「ハーレム・シャッフル」を聴きながら、ダンスのような軽快なステップで街頭を歩くシーンしか記憶していない。

 エドガー・ライト監督作品はこのところ続けて3本観ているが、どの作品も緻密でスタイリッシュな編集、しゃれたユーモアセンス、気もちのいい音楽の使い方など、「映画を観ることの快感」を味あわせてくれる作品だった。
 この作品は今まで観たサイモン・ペッグニック・フロストと組んでの作品ではなく、アメリカで撮られた作品。

 主人公(アンセル・エルゴート)は強盗グループの強盗決行後、華麗なドライヴィング・テクニックでグループを逃亡させる「逃がし屋」ドライヴァーで、自ら「ベイビー」と名乗っている。かつて交通事故に遭って難聴だと言い、そのための耳鳴りを防ぐためいつもイヤフォンで音楽を聴いている。
 彼はドクという男(ケヴィン・スペイシー)にあることから借金があり、返済のためにドクの計画した強盗(メンバーはいつも違う)に「逃がし屋」として何度も加わっている。

 主人公はレストランでウェイトレスのデボラ(リリー・ジェームズ)と知り合い、仲を深める。そんなとき、ドクからの呼び出しがあり、「これで借金がなくなる」という最後の仕事を請け負うことになるのだが‥‥。

 スピードと運転テクニックが勝負の「カーチェイス」を、エドガー・ライト監督お得意のスピーディーな細かい編集・撮影・演出で見せ、そこにフィットするいつもの既製音楽と共に楽しませてくれる。「スピードと運転テクニック」というのは、エドガー・ライトの映画演出ポリシーの暗喩なのかもしれない。
 わたしはこういった「カーチェイスもの」映画というのはまるで観ないのだが、ただ映像に翻弄される気分でラストまで見通した。そして単純な「アクション映画」では終わらず、その中にうまく「ラブストーリー」をはめ込んでいるのも気もち良かった。

 わたしのエドガー・ライト監督の作品でのいちばんの楽しみは、わたしの知っている音楽を使ってくれること、その音楽をどういう風に生かしてみせてくれるか、ということにあったりするのだが、この作品でも古いモータウンサウンド、そしてスタックスの曲などを楽しませてもらった。
 さいしょに書いたように、そんな曲に合わせて主人公が(彼が車に乗っていないときには)ステップをつけ、ダンスのようなカッコいい動きをみせてくれるのだが、この主人公を演じるアンセル・エルゴートという人物、幼い頃にはバレエを学んでいたというし、2021年にはスピルバーグ監督版の『ウェスト・サイド・ストーリー』で主役を演じているようだ。また、この作品の冒頭にはスタッフとして「コレオグラフィ」担当の名もあり、しっかりとした振付けがされているようだった。そういうところで、この映画は「ダンス映画」という側面も持っているかと。