ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ダーティハリー』(1971) ドン・シーゲル:監督

 もう50年以上も前の作品だということに驚いてしまう。この、ハリー・キャラハン(クリント・イーストウッド)というヒーローも、「アウトロー的な刑事」の典型として、以後のハリウッド映画に大きな影響を与えたのだろう。

 映画はやはり主人公の紹介もあってか、いくつかのエピソードがつながって描かれてちょっと求心性がない感じだけれども、連続殺人犯の男が少女を誘拐し、その身代金をハリーが犯人のもとへ渡しに行くというところでサスペンス性も強まり、ハリーが夜中の誰もいないスタジアムの真ん中で犯人を捕らえるまでは緊迫性も強く、画面に食い入るように観たのだった。

 しかしところが、ハリーの犯人逮捕の過程が「違法」だとして、捕らえられた犯人は罪に問われることなく釈放されてしまう。「そりゃあいくら何でも創作だろう」と思ったが、現実に当時のアメリカではそのような法があったのだという。まあたしかに令状もなく、逮捕の際に拷問めいたことが行われれば「問題」があるのだろうが、ハリーの側には「誘拐されている少女の命がひっ迫している」という切迫感もあるし、誰が見たってこの男が「犯人」なのだから、余計な手順を踏まずにサッサと逮捕して誘拐された少女の居場所を聞くのは当然のことだろう(残念なことに誘拐されていた少女はすでに死んでいたが)。

 実はそれ以降の、犯人がスクールバスを襲って少年少女らを人質に、空港で現金を受け取ろうとするのをハリーが阻止するという展開は、バスの中でおびえる少年や運転士の恐怖感の描写はいいけれど、「アクション・シーン」としては中盤のスタジアムでの逮捕劇に一歩譲るところがあるか。

 この犯人役のアンディ・ロビンソンという役者、ある演劇で舞台出演していたのを見たイーストウッドにスカウトされたというけれども、実に気色悪い表情を浮かべるサイコパスを演じ、強烈な印象を残している。
 この映画での彼はのちに『ダークナイト』でのジョーカー役(ヒース・レジャー)に影響を与えたともいうけれども、この『ダーティハリー』のあと同じような役のオファーばかりが続き、当人はウンザリしていたともいう。

 さて、この『ダーティハリー』シリーズは「5」まであるのだけれども、ドン・シーゲルの監督はこの『ダーティハリー』だけだった(「4」はイーストウッド自身が監督しているが)。はたして全作観るべきかどうか、ちょっと迷ってしまうのだ(「U-NEXT」とはあと2週間で契約をやめるつもりだから)。

 そうだ、映画の最初の方でハリー・キャラハンがカフェに入って行くシーンだったか、そのカフェの後方にはイーストウッドの第一回監督作品『恐怖のメロディ』(「Play Misty for Me」)の上映中の看板がチラッと見えたのだった。