ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』(1989)アキ・カウリスマキ:監督

 シベリアのバンド「レニングラードカウボーイズ」は、メンバー全員が黒ずくめで、奇妙につま先がとんがった靴を履いている。皆が「北九州の成人式だぜ~!」ってなヘアスタイルで、これは一族の遺伝なのか、メンバーの家のベビーベッドに寝ている赤ちゃんも同じヘアスタイルだし、ついでに飼われている犬も同じだ! 彼らは「ポリーシュカ・ポーレ」とかのポルカ音楽を演奏しているが。
 彼らのマネージャーのウラジミール(マッティ・ペロンパー)は「オレたちゃアメリカに売り込むぞ!」とメンバーに英語の勉強をさせ、夜中に野外でギター練習をしてこっちこちに凍りついてしまったメンバーと共に、いざアメリカへ!
 アメリカのプロモーターは「マディソン・スクエア・ガーデンでやろうかヤンキー・スタジアムでやろうか」と思案するが、手始めに事務所の地下ガレージで演奏させてみる。それを聞いたプロモーターは、「メキシコでオレのいとこが結婚式を挙げるから、そこで演奏しろ」と言う。
 アメリカ横断のために車を買おうと、中古車ディーラー(ジム・ジャームッシュの特別出演)から全財産はたいてキャデラックを買うのだ(カウリスマキ映画では「車はキャデラック」と決まってるようだ)。
 メンフィス~ニューオーリンズ~ガルベストンとライヴをやりながら旅をつづけ、「アメリカはロックンロールだぜ!」と言われればロックンロールを吸収し、「カントリーやれよ!」と言われればカントリーをやる。
 しかしマネージャーのウラジミールはライヴの上りをひとり占めし、バンドの連中には食事にも生のタマネギ、自分だけガンガン缶ビール飲んだり、けっこうな食事。怒ったメンバーは「革命」を起こして一時期立場は逆転。しかしふたたびウラジミールが復権したりする(民主主義の復活)。
 途中、メンバーは留置場に入れられたり、車のエンジンを盗まれたりもするが、産まれてすぐにシベリアから海に流され、アメリカに流れ着いたという「親戚」と出会い、彼も新しいメンバーに加入したりして、けっこうバカ受けするようにもなる。
 ついにバンドはメキシコに到着。結婚式に参加するメキシコ人ヴォーカルを迎え、凍り付いていたメンバーも解凍、皆でコリード風の演奏を聴かせてハッピー・エンド! 彼らはメキシコでトップ10入りするらしい。

 ところで、レニングラードカウボーイズのメンバーに、昨日見た『パラダイスの夕暮れ』でマッティ・ペロンパーの同僚で「最高にいいヤツ」を演じていたサカリ・クオスマネンが出ていた。ギター持ってたけど弾いてなかった(笑)。

 ある意味しょ~もない小ネタギャグ満載で、「あらあら」とは思いながらも、けっきょくひたすら楽しい気分で突っ走った80分。バカげているようでもとってもドライな陽気さを持った作品で、「音楽は国境を越えるのだ」という、偉大なるメッセージが伝わってくる。素晴らしい!