ゴダール、トリュフォーと並ぶ「ヌーヴェルヴァーグの旗手」クロード・シャブロルの代表作。わたしはパトリシア・ハイスミスの作品も映画化しているシャブロルの作品がけっこう好きなのだけれども、今では彼の作品もほとんどが廃盤で、観ることは出来ない。
この『いとこ同士』はずいぶん昔に観た作品で、ほとんど忘れてしまったとはいえ、大きなストーリーの流れは漠然と記憶していた。
シャルル(ジェラール・ブラン)はパリで勉強するため、田舎からパリのいとこのポール(ジャン=クロード・ブリアリ)のアパートでポールと同居することになる。しっかしポールはとんでもないパリピで、毎夜のようにアパートに友人らを集めて乱痴気騒ぎをやるのである。そんなパーティーに同席していたシャルルは、そのうちにフロランスという女性に恋をしてしまう。フロランスも彼に惹かれるのだが、このフロランスはけっこうなビッチで、パーティー仲間からは「あんだけ男の童貞を奪っておいて、今さら処女のフリをするのか?」などと言われる女だし、ポールからは「おまえとシャルルとはムリだよ」と説得され、ついにはポールと同棲することになる。つまり、ポールのアパートにはシャルルもいるわけで、なかなかに悪趣味な「三角関係」になる。
フロランスはそのうちにポールと別れて出て行くのだが、その時期シャルルには大学の試験が待ち受けていた。それはポールにしろ同じことなのだが、ポールは相変わらず自宅でパーティーを開きまくり、シャルルの勉学の邪魔になるのだった。
つまり、あれだけ遊び呆けていたポールは試験に合格し(カンニングしたらしい)、あれだけ勉強をしたシャルルは落第してしまうのだった。ま、それでラストになだれ込むのだが。
ヒゲでキザったらしい杖を持ったジャン=クロード・ブリアリは、いかにも「軽薄ブルジョワ」という空気全開で、どこまでも「マジメ青年」風のジェラール・ブランといい対比になっていて、この二人の配役だけでこの作品は「成功」していた感はある。そこにさらに、ポールの開くパーティーに集まって来る、有象無象のわけのわからない連中がデカダンスな空気感をつくっている(フロランスもけっきょくはそんな中の一人ではある)。
ただ部屋にこもってパーティーやるだけでなく、皆で車でパリ市街のドライヴにも出かけ、映画の空間を拡げるだろうか。
ここでも撮影はアンリ・ドカエで、室内で手持ちカメラで動きまわって見せてくれるし、ヒッチコックばりに部屋の中をグルグルと回ったりもする。
ラストはシャルルにはもちろん、ポールにとってもひとつの「破滅」ではあり、そこには「若さゆえの<暴走>」を批判的にとらえるシャブロルの視線があるのだろうか。