ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『知的常識シリーズvol.3 フランツ・カフカ』D・Z・マイロウィッツ ロバート・クラム:著 堀たほ子:訳

 前にも書いたけれども、わたしがこの本を購入したのは「カフカ」についての本であるのはもちろん、その挿画をあのロバート・クラムが描いているからだった。
 アンダーグラウンド・コミックのカルトな作家としてのロバート・クラムのことを知る人もそれなりにいるだろうし、今の日本でも「彼のファンだ」などという人もけっこういることだろう。まあわたしとて「彼のファンだ」とまでは言わないが、彼独特の屈折した表現に、一種「アート作品」を観るような感想を持ちもする(いや、けっこうその「濃厚な」表現にうんざりすることもあるけれども)。
 いや、でもあのジャニス・ジョプリンの最初のアルバム「Cheap Thrills」のジャケット・イラストを描いている人だといえば、けっこう「ああ、アレか!」と了解してくれる人はけっこういることだろう。↓コレね。

       

 この本のテキストを書いた「D・Z・マイロウィッツ」という人物のことをわたしはまるで知らなかったのだが、調べるとアメリカで育った彼はその後イギリスに移住し、いくつかの戯曲を書いているようで(邦訳はされていない)、このカフカ本以外にもおそらくは同じような「Introducing Camus」(この本にも挿画がついているようだけれども、ロバート・クラムではない)も書いているし、カフカの『城』のGraphic Novelというのも書いているようだ。この本の挿画はチェコのアーティストらしい。

 まず、このカフカの本の基調というのは、「カフカと言えばカフケスク(Kafkaesque)と言われるが、では誰がカフカをちゃんと読んでいる?」という感じで、「Kafkaesque」という言葉が知的雰囲気の中でやたら使用されるアメリカやイギリス(英語圏)の現状に対して、まさに「知的常識」への「入門」というところの本にはなっているのだが、その中でロバート・クラムのイラストが実はカフカへの強い「親和性」をあらわしているというか、それは正統な「カフカ解釈」ではないかもしれないが、例えば今の日本では「絶望名人」などと呼ばれてしまうカフカの、その「絶望」をダークに表現していて、わたしなどは「アングラの世界に生きるカフカ!」という感じでとても惹かれたし、例えばカフカの短篇『巣穴』に描かれた「モグラ(?)」の図像など、わたしにはしっかりと「アート作品」である。
 下の絵は、カフカの「性」に対する、女性に対する恐怖心をあらわしたものだというが、この絵もすばらしい!

     

 文章も、「チェコプラハ市民」であったユダヤ人のカフカの、世間との関係(もちろん父親との関係を含む)、ジューイッシュとの関係なども短いながらも的確に書かれていると思い、「またカフカを読んでみよう」という気にはさせられたし、やはりロバート・クラムの挿画は、わたしにはインスピレーションの源(みなもと)になりそうだ。
 蛇足的に書き加えれば、この翻訳者は「ボルヘス」を「ボルゲス」と表記するなど、文学には明るくないように思えた。