ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『グエムル-漢江の怪物-』(2006) ポン・ジュノ:脚本・監督

 この怪獣が生まれてしまった背後には、過去の駐韓米軍のいいかげんな薬物(ホルマリンだけれども)廃棄があるという描写があり、ちょっと『ゴジラ』みたいだなとは思った。ただ、この怪獣はもっと小型で、長いしっぽを入れても体長は10メートル足らずだろうし、まあそのルックスは「ナマズ」に足が生えたみたいな感じだ。
 とつぜんソウル近郊の漢江(ハンガン)に出現した大ナマズは、あたりの人間をかっ喰らいながらまた姿を消すのだけれども、そのときに川べりで露店を営むカンドゥ(ソン・ガンホ)の娘のヒョンソも、助けようとしたカンドゥの目の前でしっぽに巻き付けてさらって行かれてしまう。しかしヒョンソは死んではいなくって、ケータイでカンドゥに連絡を取ってくる。彼女は怪獣の巣窟らしい下水道に閉じ込められているという。ここで、カンドゥとカンドゥの父、弟、妹らでヒョンソ救出作戦が実行されるのである。

 まずはどうも、このカンドゥの家族がポン・ジュノ監督の大ブレイク作『パラサイト』の家族と相似形というか、妹(ぺ・ドゥナ)はアーチェリーの銅メダリストだったりするわけだし。
 それで、だったら国と協力してヒョンソを助ければいいのだけれども、ここで怪獣は知られぬウィルスの「宿主」なのではないかということになり、カンドゥ一家は隔離されてしまい、先日観た『アウトブレイク』みたいなことになってしまう(『アウトブレイク』そっくりの黄色い隔離服も登場する)。そ~んなわけで映画は唐突に政治的な展開もみせるようになり、終盤に弟が怪獣を攻撃するのに「火炎びん」を使ったりするところで、「光州事件」の記憶をも呼びおこされることになる。

 『ゴジラ』や『キングコング』みたいなバカでかい怪獣というのではなく、そこそこの大きさの「人間を襲う」怪獣としてのリアリティーは感じさせられるし、とにかく、CGと絡んで疾走するカメラのカメラワークはすばらしい。やはり、観終わってみれば韓国での中流~下層階級の人たちへのシンパシーを強く感じるわけで、「こういう映画というのは今の日本ではなかなか撮れないだろうな」とは思うのだった。