ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて』クリス・フォギン:監督

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 「実話」の映画化ということだけれども、コーンウォールの船乗りたち(漁師・警備艇、救命艇の乗組員ら)「Fisherman's Friends」が大手レコード会社(Universal Music)と契約し、2010年にそのファースト・アルバムがみごとに売り上げトップ10入りしたというところは実話だろうけれども、いろいろな背景は映画用に脚色されていることだろう。そもそも「Fisherman's Friends」は、ユニヴァーサルと契約する前にマイナー・レーベルから2枚のアルバムをリリースしていたりもする。

 まあここで「そんな、事実と違うのではないのか」とか言いたいのではないわけで、これは実に楽しい映画ではあった。
 ひとつには、じっさいにコーンウォールでロケ撮影したという「田舎の風景」、その田舎に生活する人たちの生き生きとした感じがとても心地よいわけで、それがロンドン風景、ロンドンの人たちとの対比で活かされていた。
 主人公のレコード会社の男、ダニーを演じるダニエル・メイズという俳優(この顔は見覚えあるか)は人柄が良さそうで、みていて応援したくなるし、つまりは「ダニーの恋人になるのかよ?」というシングルマザーのオーウェンを演じるタッペンス・ミドルトンという女優さんも、いかにも「漁港の町暮しの女性」という感じで好感度高い。その娘のタムシンもかわいいし。
 おかしいのは、町の人たちが皆、「それは17××年のことだった」とか、18世紀のこととかをつい2~3年前のことかのように語ることで、「さすが百年も二百年も昔の歌を歌いつぐ人たちだわい」との感銘を受けるのだった。

 それで大事な「音楽」。わたしの知る<Sea Shanties>には、コール&レスポンスの魅惑的な曲が多かったのだけれども、そういうところでは残念ながら、そのような曲は歌われなかった。わたしの知っていた曲も2曲ほどにすぎず、これはやはり英国トラッドの奥深さだろうか。それともコーンウォールという土地柄(イングランドの南西の飛び出した部分で、独自の言語、文化を持っているという)。
 そんな中で映画で何度か歌われ、ほとんどこの映画の主題歌的扱いだったのが「The Drunken Sailor」で、これは確かにもっとも広く知られたSea Shantiesの一曲で、ノリのいい曲である。この曲はそもそもはアイルランド、つまりケルトの音楽らしいのだけれども、楽譜が出版されたことなどもあって、20世紀初めからあらゆる地域で歌われるようになったらしい。
 それではおしまいに、アイルランドの国宝的バンド、Irish Roversによる「The Drunken Sailor」を聴きましょう。彼らも歴史の長いバンドだけれども、もう40年以上も昔からこの曲を演奏して歌っているのではないかしらん。