ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

2020-01-26(Sun)

 この日は、朝早くからとなり駅に出かけ、映画を観た。この映画館は同じスクリーンで同じ映画を繰り返し上映するのではなく、一本ごとに上映作品をとっかえひっかえするわけで、このスケジュールは一週間ごとに変わる。さらに、一本の映画は基本二週間の上映になる。まあいちばんいいのは1時ぐらいからの上映で、これなら仕事の帰りにゆっくり観ることが出来るわけだけれども、そんな上映スケジュールがわたしの都合に合わないときは、こうやって土曜日とか日曜日に観に来ることになる。

 今日観た映画は、イギリス映画の『フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて』という作品。これは船乗りたちがバンドを組んで伝承歌を歌っていたらひょんなことからメジャーデビュー、ブレイクし、人気者になってしまったという「実話」をもとにした作品だという。
 そういうシナプシスを知ると、わたしなどは「そりゃあぜったいに、船乗りたちが歌うトラディショナル・ソングは<Sea Shanties>に決まっているではないか!」と思い、とにかくそんな<音楽>を聴きたいというのもあって、観ることを決めていた。

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 いちおう書いておくと、わたしはロックというものは基本、十代でいちど卒業し、二十代からは英国のトラディショナル・ソング(トラッド)の熱烈なファンになっていたのだった。かなりマニアックなレコード・コレクションを持っていたのだけれども、その後時代はCDの時代になるし、わたしはひんぱんに転居を繰り返しながら金もなくなるし、それだけのレコード・コレクションを維持することが出来なくなり、ビニール盤はすべて売っぱらってしまった。
 わたしはそんなビニール盤もいずれはみんなCD化されるものと踏んでいたのだったが、これが大きな大きな誤算で、そんなマイナーなトラッドのレーベルは自分たちの財産をCD化しないまま(一部はCDになったが)消えてしまった。これは悔やんでも悔やみきれないというか、せめてカセットとかMDにコピーしておけばよかったのだ(ごく一部だけMDにコピーしたが)。
 この映画でいっぱい歌われる<Sea Shanties>も、そんな曲だけを集めたレコードを2枚は持っていたな。
 とにかく映画としてどんな出来だろうが、トラッドがいっぱい聴けるのならそれで満足だろう。

 せっかくわたしがうんちくを語れるチャンスだから、もうちょっと言っておこう。<Sea Shanties>とはつまり「船乗りの歌」なのだが、それはイギリス海軍(世界一強かったのだ!)率いるところの軍艦、当時でいえば<帆船>の乗組員である「セイラー」の歌った<Sailor's Song>と、漁師たちが船上で歌った<Fisherman's Song>とあるのだけれども、海軍が近代化されて歌なんか歌ってる雰囲気じゃなくなったあと、漁師たちがそんなセイラーの歌を引き継いで歌うようになったのね。このことはこの『フィッシャーマンズ・ソング』でも聴ける通り。
 これらの<Sea Shanties>には宗教色は皆無で、けっこう酒にまつわるナンセンスな歌詞の曲もある(映画でフィーチャーされていた「The Drunken Sailor」もそうだ)。それはイギリス人の国民性なのかもしれないが、「神」の代わりに例えば国王や、その艦船の指導者、船長などを讃えたものが多い。
 アメリカにも「船乗りの歌」というのはあるのだけれども、これは「ワーク・ソング」という色彩が強く、つまりは「黒人霊歌」的になっていく。「ゴスペル」であろうか。そうではない白人の下層階級が歌ったのが「ホーボー・ソング」で、これはアメリカのフォークの源流となり、ロックへとつながって行く。

 では、わたしがいちばん好きな<Sea Shanty>を一曲紹介したい。

 この曲は、亡くなったテイラー将軍を悼む歌なのだけれども、「船乗りによる追悼」というのは、まさにこういう、めそめそしない勢いのあるノリ、というのが本当だろう。というか、英国トラッドのいいところではある。

 ‥‥今日はちょっと、自分の趣味のことを書いてしまいました。