ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『デス・プルーフ in グラインドハウス』(2007) クエンティン・タランティーノ:脚本・監督

 こないだ観た『プラネット・テラー in グラインドハウス』とこの作品との2本で連作「グラインドハウス」を構成。『プラネット・テラー in グラインドハウス』の方はかなり徹底した「B級映画」テイストの作品だったけれども、こっちはタランティーノが「そ~んなにしゃかりきにならないで」自分の撮りたい映画を撮った、という印象の作品で、そういう意味ではかなり「趣味的な」作品かと思う。けっきょくは70年代とかの「カー・アクション映画」へのオマージュらしいのだけれども、わたしはそのあたりの映画にまったく不案内なので、何とも語ることもない。

 つまりけっきょくこの作品、ストーリー展開がどうのこういのとかいうのではなく、女性たちのしょーもないトークが延々とつづくのである。そこにカート・ラッセルの演じる「スタントマン・マイク」というのが近づいてきて、彼の乗る「デス・プルーフ仕様」の車でもって女性たちを襲うと。

 前半、後半の二部に分かれていて、前半ではスタントマン・マイクがガッチリと女の子たちを死に至らしめてしまうのだけれども、自分もひん死の重傷を負うわけで、「そこまでしてやって、何が面白いんだろう?」みたいな感覚にはなるけれども、「死を賭けてこその極上の<快楽>」を求める男なのだろう。
 それで後半は14ヶ月後、傷も癒えたスタントマン・マイクは「次の獲物」を狙うのである。場所を変えて同じような展開になりそうなんだけれども、今回の女の子たちはなんと、映画の裏方の女性たちで、中にはふたりの<スタント・ウーマン>もいるのだった。スタントマン・マイクの追突、幅寄せなどの攻撃を何とかしのいで、逆に女性たちの復讐にはなってしまうという話。カート・ラッセルが女性たちにボコボコにのされるというラストは、喝采モノ。
 この後半に登場する「ゾーイ」という女性はじっさいに<スタント・ウーマン>として活躍される人らしく、彼女が実名で出演してることからも、この作品は彼女に捧げられた作品ともいえるだろう。

 そういうわけで「後半」はけっこうずっと「カー・アクション」の連続なのだけれども、「前半」では、女性たちがバーでジュークボックスからの音楽をとっかえひっかえ皆で聴くシーンがつづき、ここでのタランティーノの「彼らしい」選曲がひとつ、まさに「タランティーノ映画」だねえというところでもある。

 わたしがいちばん気に入った選曲は、女性たちがスタントマン・マイクにやられちゃう前にクルマの中で聴いていたDave Dee,Dozy,Beaky,Mick & Tichの「Hold Tight」という曲。ここで女の子たちは「もしもThe WhoのPete TownshendがThe Whoを脱退してこのグループに加入したならば、グループ名は"Dave Dee,Dozy,Beaky,Mick,Tich & Pete"になるんだよ!」などと、実に下らない話をしているのだが、実はわたしはこの曲が大好きだったのだ。この曲は日本ではシングル盤ではリリースされてないのだけれども、わたしは当時持っていたイギリス系ビート・グループの、シングル盤でリリースされなかった曲を集めたオムニバス・アルバムでこの曲を聴いていたのだ。

https://www.youtube.com/watch?v=J5RiPbBgO6g

 この曲はアメリカでもまるっきしヒットなどしてないはずなのだが、こういう曲を選ぶのが、わたしがタランティーノを好きなところだ。Dave Dee,Dozy,Beaky,Mick & Tichは、この曲のあとも同じようなたたみかけるビートの「Bend It」という曲をイギリスでけっこうヒットさせたのだけれども、この曲もアメリカでも日本でも無視された。アメリカ、日本で彼らが残した唯一のヒット曲は「キサナドゥーの伝説」という曲だけれども、わたしはこの曲はそれほど好きではなかったな。
 しつっこいけれどももう少し書いておくと、日本で「キサナドゥーの伝説」がシングル盤でリリースされたとき、グループ名が「ディヴ・ディー、ドジー、ビーキー、ミック&ティッチ」では長すぎるというので、勝手に「ディヴ・ディー・グループ」ということにされてしまったのだった。