ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『大いなる眠り』(1978) レイモンド・チャンドラー:原作 マイケル・ウィナー:監督

 この映画の製作もまたエリオット・カストナーで、この人はアルトマンの『ロング・グッドバイ』以来、チャンドラーのフィリップ・マーロウ作品の映画化に入れあげていたみたいだけれども、本作はハワード・ホークス監督の『三つ数えろ』のリメイクということになる。
 監督はイギリス人のマイケル・ウィナーとなり、脚本も彼が手掛けた。おそらくはマイケル・ウィナーの発案なのだろうが、舞台は現代のイギリスに移されている。マイケル・ウィナー監督といえばわたしは遥か昔に、ドイツ軍の捕虜だった兵士がゾウといっしょにアルプス越えして脱走する『脱走山脈』という映画を観た記憶がある。それともうひとつ、この監督はスタッフ、女性出演者にかなりのパワハラ、セクハラを行っていたということで、その死後に「#MeToo」のやり玉に挙げられていた人でもあった(こういうネガティヴなことを書いちゃってもいいでしょう?)。

 フィリップ・マーロウ役は『さらば愛しき女よ』につづいてロバート・ミッチャムということになったが、前作『さらば愛しき女よ』みたいにはボコボコにされることもないのだった。他にもオリヴァー・リードやサラ・マイルズ、エドワード・フォックスにキャンディ・クラークという、けっこう豪華な布陣だし、ジェームズ・スチュアートも依頼主のスターンウッド将軍役で出演している(その執事を、先日観た『白鯨』でわたしの印象に残ったハリー・アンドリュースが演じている)。

 (あたりまえだけれども)ストーリー展開は『三つ数えろ』とほとんど同じだし、映画冒頭のマーロウのセリフも『三つ数えろ』とまるでおんなじ。ただ、『三つ数えろ』では相手に「背が低いのね」と言われていたけれど、こっちでは「背が高いのね」と、おそらくは原作の通りに修正されていた。
 『三つ数えろ』では規制されていたポルノ写真やヌードも、この作品ではばっちり登場してくるし、おかげで次女のカミラのヤバさはよりはっきりとしたけれども。
 しかしやはり、どう見ても「ノワール映画」にイギリスは似合わない。ロスのような街の夜景をバックにしてこそフィリップ・マーロウはサマになるというのに、これでは「暴力も辞さない(銃も撃つ)」アクション探偵のシャーロック・ホームズみたいだ。

 あと、かなり豪華な配役だというのに、演出はそれらの登場人物それぞれの描き分けにあまり気を配っていない印象もあり、次々に登場して来る新しい登場人物らの区別が、わたしにはだんだんにつかなくなってしまうのだった。
 ということで、わたしには「残念」な作品ではあった。