ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『贖罪』(2012) 第3話「くまの兄妹」 湊かなえ:原作 黒沢清:脚本・監督

 第3話のヒロインは、エミリーの母の麻子に「エミリーが殺された」ことを伝えに行った晶子(安藤サクラ)。

 晶子はその体験がトラウマになったのか、成人しても家に引きこもるような生活をしている。

 お兄さんの幸司(加瀬亮)が結婚し、家を出て会社をはじめるが、結婚相手はシングルマザーで、晶子はその連れ子の若葉といっしょに遊ぶことが多くなり、若葉も晶子を慕うようになる。
 幸司の仕事場は廃倉庫のようなガラ~ンとしたところで、幸司の仕事も何をやっているのかよくわからない。幸司の妻も幸司の職場でたいていデレ~ンとしている。

 ある日、幸司が職場のベッドで若葉におおいかぶさっているのを目にした晶子は、とっさに紐で幸司の首を絞めて殺してしまう。
 拘置所の晶子に面会に来た麻子は、晶子から事件の一部始終を聞き、晶子はそれは晶子としての15年前の「贖罪」だと語られるのだが、麻子は「そんなことが<贖罪>になるなどと思わないでほしい!」と突っぱねるのだった。

 いつもグレーのフード付きのジャージを着て、もっさりとしている晶子の容姿は、その肩にかかる長髪でのシルエットからも、それは童話などに登場する「くま」か、というイメージも理解できる。それを安藤サクラが演技でフォローする。
 そしてやはり、兄の仕事場の廃墟っぽい空間がいかにも黒沢清っぽくもあるし、この回には黒沢清らしくも車の中のシーンもあり、それは「CURE」のような浮遊感を呼ぶようなものではないのだが、やはり車内と車の窓の外の流れて行く風景とは、情景として一致していないところがあり、一種非現実な空気感を醸し出してくれる。それからある意味唐突な、音楽のバグパイプ。わたしもこれには完全に持って行かれてしまった。このアイディアはやはり黒沢清なのか、それとも音楽担当の林祐介だったのだろうか。

 そもそも、晶子の兄の幸司はじっさいに若葉に対して「性犯罪」なり何かをしようとしていたかどうかも不明といえば不明であり、単に晶子の「思い込み」でしかなかったではないか、という「疑念」はあるし、話を聞いた麻子の反発も、そのあたりのことへの「反発」だったかもしれない。

 第2話で、15年前の「事件」解決への進展があるのかとも思われたけれども、けっきょくまたスタート地点に戻ってしまったようだ。