ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『Seventh Code』(2014) 黒沢清:脚本・監督

 実は、一昨日観た黒沢清監督の『ダゲレオタイプの女』のヒロインのコンスタンス・ルソーという女優さん、わたしは前田敦子に似てるように思いながら見ていたのだけれども、どうなんだろう?

 黒沢監督はこの『Seventh Code』の前に、トニー・レオンや、この前田敦子の出演する『一九〇五』という作品を撮ろうとしていたのだけれども、残念なことに製作中止になっていたのだった。そのあとにもともとは前田敦子のシングル『Seventh Code』のミュージックヴィデオとして撮られていた作品を、製作の日活がもっと尺を長くして「映画」とし、映画祭に出品することも提案し、実現したのだという。
 黒沢監督は俳優としての前田敦子に相当に入れ込んでいるようで、このあとの『散歩する侵略者』(2017)にも出演させているし、2019年の『旅のおわり世界のはじまり』は、最初から前田敦子出演ということで企画された作品だったようだ。そういうところで、いちばん最初に黒沢監督が前田敦子と撮った作品が、この『Seventh Code』だったわけだ。

 作品はいきなりウラジオストクの街頭から始まり、キャリーケースを引きずって歩いていた女性、秋子(前田敦子)は車から降りた男、松永(鈴木亮平)を目にすると彼を追いかけてつかまえ、「東京であなたに食事に誘われたことがあるのだ」と言う。松永はほとんど無視して行ってしまうのだが、秋子は松永とまた会うために近所の日本人の経営する小さなレストランで働かせてもらう。
 ‥‥まさか、ただいちど食事をいっしょにしたからというだけでウラジオストクまで男を追って来たのかと驚くのだが、ついに次に彼女が松永とめぐり合うと、松永は町はずれの廃屋へと入って行くのだった。そしてそこで松永はロシア・マフィア風の男らと会っているのだった。

 笑っちゃうのだが、秋子は秘密組織のエージェントというか、そんなロシア・マフィアと核爆弾起爆装置部品の取引をしようとしている松永を追っていたのだった。
 秋子を自分の部屋の連れ込んだ松永は、秋子を始末しようとするのだがそのときに秋子は強烈な反撃に出て、松永を倒してしまうのだった。
 まあその続きもあるのだけれども、そこまで書いてしまうのはやめておこう。しかしやはり秋子~前田敦子の途中の豹変ぶりにはわたしも観ていて驚いてしまい、巻き戻して二度見してしまった。

 どのシーンもどの場面も、すべて「黒沢清」印というか、他のどんな映画とは違った美しさがあると思ったのだが、それはひとつには黒沢監督お得意の「廃墟」が登場することにもあるのだけれども、やはり特徴的なのはその「照明」のかけ方にあるのではないか、とは思った。これは単に「自然光」を活かすというのとは異なる、黒沢監督の映画に独特の照明ではないかと思った。
 60分と、1本の映画としては尺は短いが、こういうドラマづくりは黒沢清監督にとって過去のVシネ時代にいっぱいやられているわけだろうし、わたしもそういうのを久々に観た思いがして楽しかった。
 この作品、ローマ国際映画祭のインターナショナル・コンペティション部門で最優秀監督賞と最優秀技術貢献賞とを受賞したのだという。