ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『恐竜グワンジ』(1969) レイ・ハリーハウゼン:製作・特技監督 ジェームズ・オコノリー:監督

 映画の時制は「世紀の変わり目」というから1900年前後、舞台はアメリカとメキシコの国境「リオ・グランデ」付近。いろいろと背景に人物の関係がある。

 ジプシーの男が、「禁断の谷」というところで小さな馬のような動物を捕える。ジプシーの老女は「禁断の谷のものは持ち出してはいけない。さもないと報いがあるだろう」と語る。
 ジプシーの男はその動物を町で「ワイルド・ウェスト・ショー」に売る。ショーのオーナーはテレサという若い女性だが、そこに彼女の元恋人のタックがやって来て、「ショーをたたんでオレと牧場をやろう」と誘う。さらにリオ・グランデで古生物研究をするブロムリー教授がその動物を見て「古生代に生きていたエオヒップスだ!」と言い、研究のためにその動物を欲しがる。
 ジプシーらはエオヒップスを「禁断の谷」に戻そうとショーから盗み出すが、ショーの連中、タック、そしてブロムリー教授らがジプシーらを追跡する。
 彼らはみな、「禁断の谷」(グワンジとも呼ばれる)に足を踏み入れるが、そこにはプテラノドン、スティラコサウルスなどの古生物が今だ棲息していたのだった。その中でも最大、最強のアロザウルスが連中の前に姿をあらわすのだった。

 この映画はレイ・ハリーハウゼンの師匠であるウィリス・H・オブライエン(『キング・コング』の特撮を担当した)が永年あたためていた企画だったが果たせず、弟子のハリーハウゼンがついに実現したものだという。そのせいか、古代生物が人間に捕らえられて「見世物」にされるというストーリーは『キング・コング』に酷似している。
 そして、この作品で人間たちが示す反応、あるものは恐竜グワンジを売り飛ばして大金をせしめようとするし、あるものは生物学の研究のために生かして捕えたいとし、この諍いははるか後の時代の『ジュラシック・ワールド』を思わせるものがある。

 設定が「世紀の変わり目」とされているし、辺境の地が舞台ということで近代の強力な兵器は出て来ないわけで、そのことが「人が恐竜グワンジをかんたんには倒せない」ことの、大きな裏付けになっているわけだ。グワンジはただ古代生物の生き残りなわけで、銃弾が当たれば傷つくし、槍を投げればささるし、「怪獣」のように不死身なわけではない。

 しっかし、ハリーハウゼンのコマ撮り「ダイナメーション」技術には目を見張るものがあり、特に実写の人間らとの合成にはまるで違和感はない(ちょびっとだけ、恐竜らの身体の色彩が不自然ではあるが)。

 何をしたわけでもなく無理矢理「禁断の谷」から連れ出され、それで逃れようと暴れたら殺されてしまうなんて、無慈悲もいいところであり、「ゴジラ」の死に涙するどころではない。この映画ではラストに、タックの道案内をしたメキシコ人の少年ロペが、「グワンジの死」に涙を流す。欲と金に囚われた他の大人たちとはちがう、無垢な反応である。