ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『原子怪獣現わる』(1953) レイ・ブラッドベリ:原作 ユージーン・ルーリー:監督 レイ・ハリーハウゼン:特殊撮影

原子怪獣現わる 特別版 [DVD]

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 エポックメイキングな「怪獣映画」で、この後多くの怪獣映画の規範となる作品。「核実験で1億年の眠りから目覚めた恐竜」という設定は、『ゴジラ』や『大怪獣ガメラ』へと引き継がれるし、先日観た『昆虫怪獣の襲来』にも類似性はあるだろう。そしてこの作品でまず「上陸した怪獣が灯台を襲い、破壊する」というのは『大怪獣ガメラ』にそのまま繰り返される。『ゴジラ』とこの作品の類似性はたびたび指摘され、特殊撮影のレイ・ハリーハウゼンはのちに、『ゴジラ』のことを「盗作だ」と語ってもいるらしい(ちなみに、この作品はハリーハウゼンの「デビュー作」だったらしい)。この作品の原作は、レイ・ブラッドベリの短篇小説だった。映画の原題は「The Beast from 20,000 Fathoms」というのだが、このFathomというのがやっかいというか、調べると一般に水深を測る単位として使われると書かれていて、1 Fathomは1.8メートルぐらいだという。そうするとタイトルの意味は「深海4万メートルから来た野獣」ということになるが、この地球に4万メートルの深さの海などはない。

 まず北極圏で核実験が行われ、その影響をみるために科学者らが氷原を探索する。そこで主人公のトム・ネスビットは巨大な生物を目撃する。その怪獣の起こした雪崩の生き埋めになったネスビットは仲間に救出され、帰国してからもずっと「怪獣を見た」と言い続けるのだが、誰も信じない。その後、北大西洋で漁船が沈没し、生き残りの漁船員はやはり「怪獣を見た」と語る。ようやっと古生物学博士のエルソン教授とその助手のリー・ハンターという味方を得て、その怪獣が先史時代に(1億年前に!)棲息した「リドザウルス」ではないかと推測する。
 教授は怪獣が南下して来ていて、いずれニューヨークを襲うのではないかと予測し、ようやく軍部の同意を得て調査を始めるが、深海調査中に教授は怪獣に襲われて死亡。そしてついに、怪獣はニューヨークはマンハッタンに上陸するのだった(このあたり、昨日観た『クローバーフィールド』に活かされているらしい)。
 市街部に莫大な被害も生じるが、軍隊の攻撃で傷ついた怪獣の血液には、謎の病原体が含まれていて、多くの人が感染する。
 つまり通常兵器での怪獣の殲滅は避けねばならず、一種の核兵器アイソトープ弾」を使用することになるのであった。
 怪獣との最後の決戦地は、コニーアイランドの遊園地となるのだった。ここで怪獣を射撃するのは、そもそも原子力研究者であるネスビットの役であった。

 ひとつに、最初の怪獣の目撃者の目撃談が、なかなか人々に信用してもらえないというあたりで、ある意味今も続くUMA目撃談に通じるところがあると思い、単純に皆が「怪獣が来るぜ!」と大騒ぎをするよりリアリティがあるかもしれないし、ひとつストーリーを盛り上げるポイントではあると思う。
 そして有史以前の恐竜といえども、現代の兵器が通用しないわけがないという問題を、怪獣の血液に「病原体」が含まれるということで、通常の攻撃は使えないことになり、これがいいポイントだと思った。
 ついでのおまけに、ネスビットとリー・ハンターのロマンスっぽい展開もある。あ、どこかにリー・ヴァン・クリーフが出演しているのだが、どこに出ているのかわからなかった。

 やはりこの映画のいちばんの見どころは、レイ・ハリーハウゼンによる「コマ撮りモデルアニメーション」の素晴らしさで、今のCGとはまた違ったアクションを楽しめるし、その合成技術には今でも感心するだろう。
 さいごに横たわって息絶える怪獣に、そこはかとなく「哀れみ」を感じてしまうのもまた、そんな「手造りアニメーション」ゆえなのだろうか、とも思ってしまうのだった。