ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ミロクローゼ』(2011) 石橋義正:監督・脚本・美術・編集・音楽

 この石橋義正監督というのはもともと映画畑の人ではないというか、もっとアート寄りのところで展覧会やパフォーマンス・ディレクションなど幅広い活動をされる人で、そう、一般には動かないマネキン人形だけでつくったコメディ『オー!マイキー』で知られてるかも、とは思う。
 わたしはこの人のさいしょの映画作品『狂わせたいの』(1997)を観てけっこう惹かれ、気にはなっていた存在だったのだけれども、この人の本拠地は関西で、たいていの展覧会やライヴは東京ではやらないのだった。それでも、彼の代表的なパフォーマンス・ユニット「キュピキュピ」の、今まで東京で唯一の公演(@スパイラルホール)にはもちろん行きましたが。

 この『ミロクローゼ』は、『狂わせたいの』につづく彼の映画作品第2作。やはり「アート系」らしくも、破天荒な作品といっていいだろうか。主演は山田孝之という俳優さんで、わたしはこの作品を観るまで存じ上げていなかったけれども、今けっこう活躍されている俳優さんだということ。

 いちおうストーリーはあって、通底する「主題」みたいなものもあるけれども、非常に奇怪な場転換の3部構成になっていて、山田孝之が3役をこなしている。
 ストーリーをかんたんに書いておくと、7歳のとき「偉大なミロクローゼ」に恋をしたオブレネリ・なんとかという男が彼女と暮らすようになるが彼女は消えてしまう。そんなミロクローゼを探すオブネレリ・なんとかの話、そして、青春相談員熊谷ベッソンが、電話で若者の恋の悩みを聞いていいかげんに答えて行く話、それと、これはオブネレリ・なんとかの話と似ているのだけれども、花屋のユリに恋をしたタモンがいなくなったユリを探して遊郭に乗り込むパートと。

 この映画の面白さはその「展開」のトンデモなさもあるけれども、ヴィジュアル的な「カッコよさ」というところにあるように思う。ポスターにも使われていた、熊谷ベッソンが二人の女性ダンサーと共に踊りながら街を進んで行くシーンは、どれもカッコいいし、やはりこの映画の大きな「見せ場」であるだろう、タモンが遊女にされたユリを探して巨大な遊郭に乗り込み、延々と「大立ち回り」を見せてくれる場面は「強烈」だ。
 黒と赤をメインの色彩に、スローモーションなどを取り入れながらの場面転換の見事さは、単にこの映画を「イロモノ」とは呼ばせない、強烈なまでの力強さがある。石橋監督はこの場面を土佐の「絵金」の作品のイメージで撮ったというが、「この映画、何の映画だったっけ?」と観客を混乱させるようなパワーで惹きつけられる。

 ちょこっと鈴木清純監督が呆けた刺青師の役で登場し、見事な演技(?)を見せてくれた。『オー!マイキー』に通じるのほほんとした世界も見せてくれるが、やはり石橋義正という人、わたしにはこれからも「要チェック」の人物であることを確認した。

 そうだ! その『オー!マイキー』の第一回放送分を、中国語字幕付きで貼りつけておきましょう。お楽しみください!