ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『カメラを止めるな!』(2017) 上田慎一郎:脚本・監督

 4年ほど前に大評判となり、わたしも映画館へ観に行った。実はこの作品、小劇場演劇と密接な関係もあり、監督はそのような小演劇の舞台を見てインスパイアされ、この脚本を書いたというし、この作品の監督役の俳優さんは、わたしもよく通った超スモールな劇場での舞台に出演していたともいう。

 まず、グダグダの「本編(?)」映像(約30分)が上映され、そのあとはその本編が製作された事情、ネタバレ、伏線回収のドラマが続く。その本編が一台のカメラからの「ワンカット」だというのが映画的ポイントで、この本編が「生放送」だったということを合わせて、ある意味「無限の面白さ」を産み出している。
 これは「低予算での映画製作」の強烈な「ウラ話」というか、製作側と監督との、監督と出演者との、そしてまた出演者同士での衝突みたいなものが背後にあり、それがまた、作品が「ゾンビ映画」だということでキメられてしまったか。

 そもそも、「ゾンビ映画」というものは「B級」というレッテル貼りから逃れ得ないところがあるわけで、そこに「グダグダの演出、俳優の下手な演技」ということも内包されていて、この作品も「こりゃあしょ~もないわな」という気分を味あわせられる。
 しかし、その「しょ~もない」本編は、観客が我慢出来るギリギリラインの30分で終わり、そのあとは「なぜ、こんなにしょ~もないものがつくられてしまったか?」という謎解きでもあり、それでもそんな、そもそもの「しょう~もない」企画の中で、スタッフ・キャストらがいかに作品を完成させることに尽力したか、ということが示されるわけで、大笑いしながら観終わったあとに、一種の達成感というか、「爽やかさ」を得ることになる。そして、冒頭に観て「しょ~もない」と思われたヤツも、こうなってみると実に「愛おしい作品」だったと思えてしまうのだ。

 まあここで提示される劇中の「作品」は「映画」ではないけれども、結果としてこのトータルな「作品」は「映画」として提示されている。そしてつまり、この映画は「作品メイキング」を主題とした屈折したコメディーであり、ラストの「やったね!」という爽やかさは、そのままこの映画のエンドロールで流される「この映画自体のメイキング映像」につながることにもなる。

 この映画を支えたのも「脚本の手腕」だろうけれども、そこにそもそも許容性の大きい、「何でもあり」みたいな「ゾンビ映画」というジャンルを持ち込んだことが「成功」の要因だっただろうとは思うし、そんな「ゾンビ映画」の「お約束ごと」をうまく脚本に持ち込んだ手腕の勝利だろうか。そこに映画のギミックな技法である「ワンカット」というのをうまく持ち込み、ある面でもっと本格的な「映画ファン」をも面白がらせることになったとは思う。面白かった。