ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『探偵マーロウ』(2022) ニール・ジョーダン:監督

 2014年に発表された、ベンジャミン・ブラックという作家によるレイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』の続編、『黒い瞳のブロンド』というのがあって、それをなぜかニール・ジョーダン監督で映画化、フィリップ・マーロウリーアム・ニーソンが演じたというのがこの作品。リーアム・ニーソンにとって、本作が映画出演100本目の記念作だということ(リーアム・ニーソンニール・ジョーダン監督の『マイケル・コリンズ』でも主演してましたし、「かつて知ったる」というところだったことでしょう)。

 しかし、あまりさいしょっから人の年齢のことでとやかく言いたくはないのだが、映画公開時でリーアム・ニーソンは70歳であった。わたしはかつて同じマーロウものの『さらば愛しき女よ』でロバート・ミッチャムフィリップ・マーロウを演じているのをみたときも、ミッチャムは58歳になっていたわけで、「原作でのマーロウの年齢設定は42歳だというのに、ちょっと苦しいなあ」とは正直思ったものだった。
 それが今回は、それをはるかに超える「70歳のフィリップ・マーロウ」というわけで、苦しいどころではない。「やはりアクションシーンは相当に無理があったな」とは思ってしまったのだった(そのことは映画の評価にはちょくせつ関係はしないが)。

 映画は1939年のロサンゼルス、元警官の私立探偵フィリップ・マーロウリーアム・ニーソン)のところに、ゴージャスなブロンド美女のクレア・キャヴェンディッシュ(ダイアン・クルーガー)という女性が、「失踪した愛人のニコ・ピーターソンの行方を捜してほしい」とあらわれることから始まる。
 ‥‥こういう女性はぜったい「ワケアリ」だから、わたしなら「どうぞお引き取り下さい」と追っ払ってしまうのだが、それでは「私立探偵業」は成り立たない。
 調べるまでもなくすぐに、ハリウッドの映画スタジオの「小道具係」だったニコ・ピーターソンという男、高級クラブの「コルバタ」の門の外で車で轢かれて死んでいることがわかる。でははたしてその死体、本当に「ニコ・ピーターソン」のものなのか?
 これから先は、マーロウの向かう先につぎつぎに新しい登場人物(悪党)があらわれ、新しい事実がわかってくるのではある(いちどマジメにあらすじを書いたけど、間違えてみ~んな消してしまった。それで正解だったか?)。
 実はクラブ「コルバタ」は秘密の麻薬取引の場で、クラブのオーナーのフロイド・ハンソン、そして麻薬王のルー・ヘンドリックスらの存在、ハリウッドの映画業界全体を飲み込むようなスキャンダルがマーロウを待ちかまえていたのだった。
 ニコ・ピーターソンは「セリーナ」と名付けられた陶器の人魚像の中に麻薬をしこたま隠し持っていて、その麻薬を追う2人のメキシコ人らによる争奪戦が繰り広げられていたみたいだ。
 クラブ「コルバタ」を訪れたマーロウは、オーナーのハンソンに毒入り酒を飲まされそうになるが、それを察して飲んだフリ、死んだフリしてると映画スタジオ地下の小道具室に運ばれるが、そこには2人のメキシコ人の死体があり、麻薬を牛耳るルー・ヘンドリックス、その用心棒のセドリックが拉致されていた。前に会ってセドリックと意気投合していたマーロウはまずセドリックを助け出し、小道具室になったホンモノのマシンガンとかでハンソン一派を皆殺しする(そこまでやるんかい? もう「探偵映画」の域を超えている感じ)。それまでのヘンドリックスの待遇に腹を据えかねていたセドリックは、ヘンドリックスのさいごの言葉にキレて彼をも射殺してしまうが、マーロウと「これからも仲良くやろうぜ」と誓うのだった。
 マーロウが事務所に戻ると、探し求めていたニコ・ピーターソンが向こうからやって来てくれる。これなら「探偵稼業」も楽だね、って感じだが、ニコはクレアとハリウッドのスタジオで夜に会うと言い残して去る。さいごの山場も向こうで「お膳立て」してくれたね、って感じ。
 さて、実は依頼主のクレア・キャヴェンディッシュは、さいしょっから新興ハリウッドの舞台裏の「大掃除」をやるつもりだった、みたいだね。マーロウはそのためにまさに「うまく使われた」って感じではあった。
 でもラストには先のセドリックとの「友情」のつづき、みたいな展開もあって、そのあたりはいかにもニール・ジョーダンらしいというか。

 ニール・ジョーダンの演出は思いっきりスタイリッシュというか、画面の構図にも凝りまくっていますね。けっこう見ごたえがある。
 音楽もアイルランドのミュージシャンのデヴィッド・ホームズが担当しているけれども、ニール・ジョーダンお得意の「既成音楽」の使用としては、今回はビリー・ホリディの「I'll be seeing you」が印象的に使われていた。

 総じてストーリー展開はとっちらかり過ぎている印象で、それが「どうなるのか?」と思うまでもなく、一気に銃の乱射で解決してしまうっていうのはいかにも乱暴な気もするけれども、それなりの「爽快感」というのは、得られると思った、かな?