ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『コンスタンティン』(2005) フランシス・ローレンス:監督

コンスタンティン [DVD]

コンスタンティン [DVD]

  • 発売日: 2005/09/02
  • メディア: DVD

 この世は天国と地獄とにはさまれた世界であり、地獄からは悪魔が人に取り憑いてこの世に侵入して来ようとしている。そんな悪魔から人の世を守ろうとするのが「悪魔祓い師(エクソシスト)」であるという、中世キリスト教的な世界観をそのまま現代に移植したような作品。

 主人公のジョン・コンスタンティンキアヌ・リーヴス)は霊能を持つ「悪魔祓い師」だけれども、かつて自殺を図ったことがありじっさいに「地獄」を覗き見ており、死後は地獄へ落ちることが決まっている。彼が霊能を活かして「悪魔祓い」を行うのは、どうやら神にアピールして地獄行きを免れたいという考えがあるようだ。しかしヘヴィースモーカーの彼は肺ガンに侵され、「余命1年」の身ではある。

 ここにドッドソン姉妹(レイチェル・ワイズ2役)という双子の霊能者があり、妹は「コンスタンティン」の名を姉に遺して自殺するのである。刑事である姉は妹が自殺するはずはないと、コンスタンティンのもとを訪れる。
 コンスタンティンには協力、相談に乗る霊能者が複数おり、霊能者ではないが彼の助手をつとめるチャズ・クレイマー(シャイア・ラブーフ)もいる。
 また、この世界には天使とのハーフブリード、悪魔とのハーフブリードという人間もいろいろと存在していて、コンスタンティンは天使とのハーフブリードのガブリエル(ティルダ・スウィントン)と親しく、彼女を通じて天界の声を知ろうとする。悪魔とのハーフブリードのバルタザールも、コンスタンティンの周辺にはうろちょろしている。

 コンスタンティンは調査するうち、人間を貶め、現世に地獄界の門を開き、悪魔を現世に出現させようとする邪悪な力を感じる。そして第二次世界大戦以来行方不明になっていた、大きな力を持つ<運命の槍>がメキシコで見つけられ、ここロスアンゼルスへ持ち込まれたことも知るのであった。さてさて‥‥(この映画では<運命の槍>と呼ばれていたが、つまりは<聖槍>、<ロンギヌスの槍>のこと。英語圏では、この俗称である<運命の槍>という呼称の方が一般的なのだそうだ)。

 映像とかのディテールはまるっきし最近のSFXを駆使したアクション映画で、造形的にあんまり出来がいいとも思えないのだけれども、さいしょに書いたように、根底に流れる「中世的な世界観」が、そのまんま現代に持ち込まれているというところは面白い。造形的に出来がよくはないと書いたけれども、ときどきはさみ込まれる「地獄」の場面は、17~18世紀あたりの絵画での「地獄図」を再現しているようなところもあり、そこのポイントは気に入ったりする。

 で、やはり見どころは、天使とのハーフブリードのガブリエル(決して「大天使ガブリエル」ではない)を演じるティルダ・スウィントンの華麗なる振舞い(演技)と、それに対照的に終盤に登場するルシファー(「ハーフブリード」ではない、ホンモノ)を演じるピーター・ストーメアの邪悪さあふれる演技だろうか(もちろん、キアヌ・リーヴスだって、とってもいいんだけれども)。
 とにかく、今の映画界で、あの大きな天使の羽根を背中に着けてリアルさを感じさせ、しかもただ「清純」などというのではないクセのあるキャラクターを演じられるのは、やはりティルダ・スウィントンさまをおいて存在しないのではないだろうか。そういう意味で、ティルダ・スウィントンという俳優が存在したがゆえに実現した映画ではなかっただろうか、という気にもさせられる。また、ティルダ・スウィントンという女優を語るうえで、この『コンスタンティン』を抜かすことは出来ないのではないだろうか。
 そして、そんなティルダ・スウィントンの存在感に拮抗する見事な演技を見せてくれるのが、ピーター・ストーメアではあった。
 ピーター・ストーメアの名をさいしょに記憶したのは、コーエン兄弟の『ファーゴ』での無口な、とんでもない人間離れした狂暴な男としてだったけれども、その後もキャリアを重ねて、やはり独特のパーソナリティを演じられる男優としてわたしなども記憶している。
 彼は何かの映画で『羊たちの沈黙』のアンソニー・ホプキンスを意識した演技をみせ、そのときはちょっと「真似事」という感想も持ったけれども、実はその後「レクター博士」的な演技を見せなくなったアンソニー・ホプキンスに代わって、まさに「レクター博士」的なファナティックな演技を自家薬籠中の物とできる、貴重な存在になったと思う。
 この『コンスタンティン』でも、白いスーツを着た「悪魔(ルシファー)」として、一種洒脱な悪魔像を見せ、この作品のエンディングを飾る彼の演技の重要さこそもまた、この作品の大事な要素ではあっただろう。
 ティルダ・スウィントンピーター・ストーメアも共に大好きな俳優なだけに、「わたしは今までどうしてこの作品を観ていなかったのだろう」とは悩んでしまうのであった。