『四畳半襖の裏張り』(1973) 神代辰巳：監督

四畳半襖の裏張り [DVD]

　冒頭の、宮下順子の芸者が人力車で遊郭に着き、人力車を降りて遊郭に入っていくワンカットのシーンは溝口健二を彷彿とさせ、「おお！いいね」とか思ったし、その宮下順子と客の江角英明とのからみのシーンの美術も照明も美しく、おそらくは「春画」を参考にしたであろう演出、襦袢の赤い色など目に焼き付いたのだけれども、ちょっと家庭で観るには音のバランスが極端というか、囁くような声が聞き取れないのでヴォリュームを大きくすると急に大音量の巷の音とかが紛れ込むので、難儀してしまったのだった。

　単に、その宮下順子と江角英明の話だけでなく、そのあいだにさまざまな遊郭の逸話、さらに「米騒動」だとかの世相もはさみこまれるわけで、これは海外では「The World of Geisha」のタイトルになったらしい。「まさに」というタイトル。そして、おそらくは大島渚監督はこの作品を観て、『愛のコリーダ』を撮ったのだろう。ずいぶんと意識しているようには思えた。

　‥‥実はあんまり一所懸命に観ていたわけではなく、こうやって「感想」などというのを書くのはおこがましい気がする。そういうわけで、短文ですがこのあたりで。