ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『幌馬車』(1950) ジョン・フォード:監督

幌馬車 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: アイ・ヴィー・シー
  • 発売日: 2004/06/25
  • メディア: DVD

 よくわからないけれども、ジョン・フォードが前作『黄色いリボン』のヒットにより、その興行収入でこの『幌馬車』を撮ったみたいな記述がWikipediaにはある。Wikipediaにも「フォード作品としては珍しい地味な映画」と書かれているが、たしかに「地味」だろう。ただ、これまで観てきたジョン・フォード映画のエッセンスのようなものは、しっかりとこの作品に詰まっている。

 兄弟が、自分らの馬を売ろうとしているが、これから西部に出立しようとするモルモン教徒らが、「案内役をやってくれるなら馬も買おう」というので、モルモン教徒の一団の案内役になる。途中、見世物小屋一座と合流し、旅は楽しいものになるだろう。ところがその後に強盗~悪漢一味らに遭遇し、いつしかその悪漢一味に主導されることになる。

 ‥‥わかったこと。1940年代から50年代の「西部劇」とは、つまり「馬」ではないのか。演出は馬をリードしなければならないし、役者らは馬に乗れないことにはお話にならないのだ。60年代以降、「西部劇」は衰退するわけだけれども、それはひとつには演出として「馬」を使える監督がいなくなったこと、そして「馬」を乗りこなす俳優がいなくなってしまったこと、ということもあるのではないかと思った。「西部劇」=「馬」と言ってしまってもいいのではないのか。

 この作品には派手な撃ち合いや戦闘シーンはないけれども、しっかりと「人と人との交流」は描かれるし、ジョン・フォードらしくも「ダンス」のシーンもある。見どころは多い作品だと思う。

 しかし、なぜ「モルモン教徒」なのか。例えばその後、アーミッシュを描いた『刑事ジョン・ブック/目撃者』のような作品もあって、アメリカ史の中でこういうマイノリティを見つめる視点というのは出て来たわけだけれども、この作品ではジョン・フォードはそこまでにモルモン教徒の独自性というものに言及してはいないように思った。ただここにあるのは「西へ!西へ!」という、19世紀の開拓者の精神ではないのか。