Rosasの、ブレイクのきっかけになった名作というか傑作。ダンサーは二人だけで、Anne Teresa De KeersmaekerとMichele Ann De Mey(この人は監督のThierry De Meyの姉妹なのだろう)。パート3の「violin phase」はKeersmaekerのソロである。
音楽のSteve Reichは、ミニマム・ミュージックを代表する音楽家なわけだけれども、ここではそのSteve Reichの音楽にみごとに共鳴するダンスの姿をみることができる。
全体が四つのパートで構成され、それぞれが「piano phase」「come out」「violin phase」「clapping music」と題されている。
やはりいちばん美しくも感銘を受けるのはさいしょの「piano phase」で、このパートの空気感が全体を支配する。
無機質なスタジオの中でふたりのダンサーが踊るのだが、2個の照明が背後の壁面に「影」を投げかける。それぞれの照明が二つの影を生み出すのだが、中央の影は二つの照明によるふたりのダンサーの影が重なる。これが「第三のダンサー」のようで、目が釘付けになる。同じ振り付けでミニマムに回転し続けるふたりのダンサーだが、だんだんに微妙にそのテンポにふたりのダンサーに差異が生じ、ここにこの作品の妙味があるだろう。「反復と差異」といえば通俗的すぎるだろうか。
カメラの位置は変化し、ダンスするスタジオも変わって行き、窓の外の風景も見えるようになる。ダンサーの衣擦れの音、息づかいも効果的に収録される。
彼女たちのダンスは特に「超絶技巧」というものではなく、観ていてもごくナチュラルなものに見えるのだが、シンプルに見えてもそういうものではない。
「violin phase」での、ダンサーの軌跡が図形を描くというのは、今でもRosasが極めようとしているところのものだろう(今年の来日公演とか)。Rosasとはどんなカンパニーか?と問うとき、やはりここに戻ってみなければならないような作品ではあるだろうと思った。