ゲオルク・フィリップ・フリードリヒ・フォン・ハルデンベルクという青年が、「ノヴァーリス」の筆名でデビューした作品であり、ドイツ・ロマン主義の誕生を告げた雑誌「アテネウム」の創刊号に掲載された断章集。これはいわゆる「アフォリズム集」ではなく、トータルな視点からは単に「哲学」、「思想」にとどまらない、「全体(Whole)」を目指すための試みと読まれるべきものだろう。だから、「警句」的なカッコいい発言をこの断章の中から見いだそうとしても無意味。
まだ、これ以降のノヴァーリスの「詩人」としての側面はあまり感じられないことは確かだけれども、哲学以外にも数学、化学、地質学などを学んでいたノヴァーリス、それらを統合しようとした意識の中に、「器官」という考えが出て来ることが興味深い。
エピグラフの、「友よ、大地は貧しい。ささやかな収穫を得るためにも ぼくらはたっぷりと種を捲かなければならない。」ということの実践がこの断章集であり、それはいちばん最初の断章、「われわれはいたるところに絶対的なものを探し求めるが、見いだすのはいつも事物だけである。」という有名な一節をスタートにはじめられる。
このときノヴァーリス26歳。彼に残されていた時間は、あと3年ほどしかないのだった。