ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『勝手にしやがれ!! 黄金計画』(1996) 黒沢清:監督

 『勝手にしやがれ!!』第3作。今回も黒沢清の単独脚本で、今回のゲストは何と、藤谷美紀である(天野英世氏も、冒頭にちょっとゲスト出演)。
 
 今回のオープニングの場所は今までとは異なり、廃業したらしい「あおぞら託児所」に雄次は暮らしているようだ。壁には大きな「森のクマさん」の絵がかかっている(この作品のために誰かが描いたのか!?)。そこに耕作がチャリンコでやって来るのだ。
 今回は仕事を手配する由美子(洞口依子)から、波多野という老人を探してほしいという依頼。雄次と耕作はすぐに老人ホームで車椅子にかけているその波多野老人(天野英世)を発見。しかし波多野老人は車椅子から起き上がって、全速で走って逃げようとする。追いかけた雄次と耕作の前で老人はバッタリと倒れ、そのまま心不全で亡くなってしまうのだ。依頼主の西(諏訪太郎)と猫島(三上剛史)は怒って依頼金は払わない。
 老人ホームから老人の遺品を引き取ってくれと言われて行ってみると、それはポンコツ寸前のワーゲンだった。エンストを繰り返すワーゲンを何とか「託児所」に運び込むが、しばらくして律子(藤谷美紀)というのがあらわれ、祖父の遺品の車を渡してほしいという。

 それから律子は居候を決め込んでしまうが、雄次と耕作がいないあいだに部屋のモノを何もかも持ち出し、路上で売りさばこうとするというトンでもない女子なのだった。
 しかし、西と猫島は次に律子の捜索を依頼して来、雄次と耕作は律子が波多野老人から地図(あまりに「略図」すぎるのだが)を預かっていたこと、かつて3人組による5000万円強盗事件があったことから、波多野老人は西と猫島と共にその5000万を盗み、その5000万円を隠した場所がその地図なのではないかと推測するのだった。
 さらに、西と猫島は警察に連行され、警察の九条という刑事(大鷹明良)もまた、皆と5000万円の行方を追うことになるのだった。
 雄次と耕作はポンコツのワーゲンの中から古い地図帳を発見、その地図帳から、律子の持っている地図がどこの地図なのかが判明し、3人は動くようになったワーゲンでその地へ赴き、みごとにジュラルミンケースを掘り当てた。しかし西と猫島、九条らもまた、雄次と耕作を追って来るのであった。

 けっこう本気で5000万を探す男たち、そしてまったくどこまでも天然な律子との、かみ合わない対比が圧倒的に面白い。そして、5000万発見場所の雑木林の中を皆が追いかけ合うシーンの、「どうやってこんな長い距離、木々の間を抜けながらあんだけのスピードでカメラが皆を追うのよ!」っていう、行ったり来たりのすばらしいシーンがあり、黒沢監督なじみの唐突な射殺シーン、唐突な「トラックに轢かれる」シーンもあり、シリアスさとおちゃらけブレンドされた楽しい活劇なのだった。
 今回は脚本が面白かったし、何と言っても藤谷美紀が素晴らしかった。