夜、病室のベッドに寝ていて夢をみた。いつもよくみるところの夢で、よく知っているようでいて、じっさいにはそんな場所は現実にはどこにも存在しないという街の夢。今こうしてそういう夢をみると、先日読んだブルーノ・シュルツの「肉桂色の店」のことを思い浮かべてしまう。
しかしまた、なぜにこんなときにこんな夢を。
そして普段のように6時ぐらいに目覚めるが、点滴は外されてはいたけれども、まだ胸から小さな機器につながっているコードはそのままなので、思うようには自由に動けない。看護師の方もなかなかやってこないし、ただ寝転がってスマホなど眺め、時間の流れを受け流す。今朝はもう、体調も普段通りになっていた。
ようやく朝食の時間になるが、朝食はヨーグルト飲料にレンジで温めただけの食パン2枚、それに小さな袋のマーマレード、そしてトマトとタマネギの煮物とフルーツの缶詰と。わたしは「レンジで温めた食パン」というのは好きじゃないんだけれどもなあ。
娘から連絡があり、9時半には病院のロビーに着いたと。わたしも着替えをしてロビーに行って娘と会い、そのあとはわたしの病室のある階のロビーへ行き、今までのいきさつなどを話したり。そんなにしているとようやく退院のお許しが出て、(また胸痛があったときに服用する)「ニトログリセリン」の錠剤をもらい、あと、普段通院している内科医へ持って行く「申し送り」の診断書も預かる。入院費を払って晴れて解放された。入院費はだいたい想像した通りの額で、かつてニェネントくんが1日入院して手術したときの費用に比べれば、8分の1ぐらいのものでしかない。
時間は10時半ぐらい。朝は雨も降っていたらしいが、退院して外に出たときはもう雨も上がっていた。遠くにサクラの花が見えて、「そういえば6年前だったか、<慢性硬膜下血腫>でしばらく入院したときにもサクラの花が満開だったなあ」などと思い出した。

駅までは歩いても15分ぐらいなので、娘といっしょに歩く。そう、きのうは4月1日で、駅の反対側のショッピングセンターも一部オープンしているという話だったので、娘もそういう関係の仕事ではあるので、「見に行ってみる?」と、いっしょに行くことにした。その前に、先にオープンしている、パチンコ屋を改装したスーパーにも立ち寄ってみた。
それでショッピングセンターの前を通ってみたが、オープンしたのは医療関係の診療所だけのようで、スーパーや100円ショップなどはまだオープンしていないのだった。
「ここまで来たらウチに寄って行ったら?」ということにして、ついでにウチのそばの「ハラールフード」の店にも立ち寄ってみた。店に行ってみると、なんと白米が10キロ5500円(税込み)という超安値で売られていた。わたしは白米は先日買ってしまったばっかりだったけれども、こっちで買えばよかったかな、などと思ってしまった。
帰宅するとニェネントくんが「お出迎え」してくれたが、わたしが知らない人といっしょなので、すぐに和室に引っ込んでしまい、食事を出してあげても食べに来ようとしないのだった。そして、ずっと「ニャンニャン」とないている。食事は器を和室に持って行ってあげたら食べたのだが、それでも「ニャンニャン」となきつづけている。「知らない人」を警戒してのことだったら、押し入れの中とかに隠れてしまうことだろうから、そういうことでないているのではない。わたしに訴えたいことがあって、ないているのだ。おそらく「きのうは何でわたしを置いてきぼりにしてどこかへ行っちゃったんだよ!」とか「夕食を出してくれなかったじゃないか!」とかの文句を言っているのだ。前にしばらく入院して、食事の世話はペットシッターの人にやってもらったときも、わたしが退院して久しぶりに帰宅したときも、同じように「ニャンニャン」となきつづけたのだった。わたしが「ネコ語」がわかると思っているのだろう。
しばらく娘と話をしてからお別れする。こういうときはいつも娘の世話になってしまうが、いろいろとありがとうと言いたい。そういう意味で、今ではわたしと世界とを繋ぐ貴重な存在でいてくれているわけだ。
昼食はカップ麺ですませ、またいつもとちっとも変らぬ日常が戻ってきた。夕方にコンビニへ買い物に出ると、そのときには空はすっかり晴れていてちょうど日の沈むところで、神社のサクラの木のところへ行ってみると、サクラの花が夕陽を浴びてオレンジ色に染まって見えた。これも美しいサクラだ。


夜になって「もう寝よう」と和室に行くと、やはりニェネントくんは「ネコトンネル」にもぐり込んで「わたしをかまってよ!」ってやっている。それでひとしきりニェネントくんをかまってやってからふとんに入ると、しばらくしてからニェネントくんもわたしの上にジャンプしてくるのだった。「一日留守にしてしまってゴメンね~」とか、ニェネントくんといっぱいお話をした。抱き上げたニェネントくんの顔を真下から見上げると、その鼻がピンク色でプクンとしていて、まるで「ういろう」みたいに見えるのだった。