ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『黄金時代』(1930) ルイス・ブニュエル、サルバドール・ダリ:脚本 ルイス・ブニュエル:監督

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 『アンダルシアの犬』の成功を受けて、シャルル・ド・ノアイユ子爵はブニュエルとダリに新しい作品の制作を依頼した。ノアイユ子爵は毎年、妻のマリー・ロール・ド・ノアイユ子爵夫人の誕生日に新作映画をプレゼントしていて、ノアイユ子爵夫人は多くの芸術家のパトロンであった。
 完成した『黄金時代』が1930年11月末に初公開されて大ヒットしたが、12月になって、右翼の愛国者連盟はその「反カトリック」的内容に激怒して上映を妨害して観客を襲撃し、隣接する美術館に展示されていたダリらシュルレアリストの作品を破壊した。事件を受けて警察は映画を審査し、映画の今後の公開を禁止する措置を取った。これらの措置と作品を攻撃する新聞記事の結果、プロデューサーであるノアイユ子爵夫妻は、以後40年にわたって『黄金時代』の上映、配給を停止させたのであった。また、カトリック教徒であった夫妻は、映画の内容ゆえにバチカンからの攻撃も受けた。

 『アンダルシアの犬』と同じく、ブニュエルとダリの共同脚本執筆から始まった映画制作だが、左翼思想を先鋭化させていたブニュエルに対し、のちにフランコ将軍の支持者となり右傾化することになるダリとの関係は悪化し、ダリは映画の撮影には関与しなかったし、完成後に、この『黄金時代』はカトリックに対する意図的な攻撃であると公然と宣言し、右翼の攻撃を呼び込む要因ともなったのである。

 映画はもちろん「反カトリック」ではあるのだが、それだけではなく「反ブルジョワ」、「反西欧文化」であり、その隠された暴力性を攻撃する。男女関係にみられる偽善性も攻撃し、性意識の開放を主張しているようでもある。
 とにかく世間一般への攻撃性、挑戦性は今観ても相当に強烈で、『アンダルシアの犬』のように断片的に寄せ集められた素材は、この映画ではすべて「攻撃の武器」ではないかといえるほどで、それらがストーリーに縛られずに断片的なだけに、余計に強烈にその「毒」が感ぜられる。
 まさに映画はドキュメンタリー風に「サソリ」の生態を捉えた映像から始まり、「ネズミをも殺す」その毒が語られる。これはこの映画の目指す「毒」を示すものだろうか。

 ブニュエルの「シュルレアリスム映画」としては、『アンダルシアの犬』と、この『黄金時代』こそがよく知られているが、イメージも飛躍して、「シュルレアリスム詩」を想起させられるところもある『アンダルシアの犬』に『黄金時代』をくらべると、通底する「世界への呪詛」とでもいうものは一貫しているわけで、場面は唐突に切り替わるとはいえ、一本の映画作品として「こりゃあ乱交パーティ」を撮ったわけか」と、了解可能でもあると思った。
 ただ、ラストに唐突に長々と字幕テキストが挿入されるのだが、そのテキストはマルキ・ド・サドの『ソドム百二十日』からの引用らしく、そのテキストのあとにはサドの小説の登場人物が、まるでキリストのようないでたちで登場する。この部分はそれまでの映画とのつながりはまるでないのだが、「反キリスト教」という、強烈なメッセージは明確だった。