ティム・バートンの「ストップモーション・アニメーション」というとまず『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993)を思い浮かべる。しかし実は『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』では、ティム・バートンはその原案と製作として関わっていたわけで、監督はヘンリー・セリックなのだった。そういうわけで、この『ティム・バートンのコープスブライド』は「ティム・バートンの監督した初の(というか、一本だけの)、ストップモーション・アニメーション」ということになる(マイク・ジョンソンとの共同監督ではあるが)。
この「共同監督」ということについてマイク・ジョンソンは、「ティム・バートンが物語の展開について監督し、わたし(マイク・ジョンソン)はスタッフと協力して思った通りの映像をつくることだった」と語っているそうだ。
なお、最終的にはディジタル処理によって、人形たちを支えていた「支柱」などは消去されたのだそうだ(そうじゃなきゃ、あの骸骨たちなんか直立も出来っこない)。
この作品の製作中、ティム・バートンは同時に『チャーリーとチョコレート工場』も撮っていて、『チャーリーとチョコレート工場』に出演していたジョニー・デップとヘレナ・ボナム=カーターは、この『ティム・バートンのコープスブライド』でも「声の出演」をしているのだ。
作品はよく『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』と比べられるけれども、じっさい『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』と同じようにダニー・エルフマンが音楽を担当し、ちょっとしたミュージカル仕立てになっていることなど共通している。
そもそもの元の話は17世紀のユダヤの民話らしいのだが、さすがにティム・バートンの演出らしく、ゴシックロマンスのテイストがたっぷりの、死者の世界と生者の世界とが入り乱れるダーク・ファンタジーになっている(特にこの作品のエンディングはまさにゴシックっぽい終わり方で、わたしは好きだなあ)。
それでこの作品で面白いのは、冒頭からしばらくの「生者の世界」こそが陰鬱な屋敷、古めかしい教会とかを舞台とした暗~い世界で、深いブルーを基調としたほとんど「モノクロ」の世界なわけだけれども、そのあとに主人公のヴィクターが引き込まれる「死者の世界」の方こそカラフルで、そこにいる死者たちはみ~んな明るくて陽気なのである(死んで骸骨になってしまっている、ヴィクターの愛犬スクラップスもかわいい)。
これは「生者の世界」の登場人物は、さいごに結ばれるヴィクターとヴィクトリアの若い二人以外はみ~んな「悪だくみを抱くもの」とか「もう生に疲れ果ててしまったもの」とかばかりの、言ってしまえば「邪悪」な世界で、明るくなりようもないのである。しかしこの生者たち皆が皆、「よくぞここまでグロテスクな姿にデザインしたことよ!」と感心してしまう(主人公のヴィクターとヴィクトリア、そして「コープス・ブライド」のエミリーとは、やっぱり愛らしいのだ)。
考えてみたら、先日観た『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』とも似通った世界観でもあると思えるし、やはりティム・バートンはこういう、「邪悪」で同時に「イノセント」な世界を描いてくれたとき、「最高!」なのである。
そしてわたしは、今読んでいるホーソンの『呪いの館』の本と、どこかその雰囲気が似通っているとも思うのだった(まあ『呪いの館』も「ゴシック・ロマンス」っぽいからね)。