ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『トゥルー・グリット』(2010) チャールズ・ポーティス:原作 ジョエル&イーサン・コーエン:脚本・監督

 コーエン兄弟の作品としては、これより3年前の『ノーカントリー』的なシリアスな作品で、また思いっきり「正統な」西
部劇でもある。原題の「True Grit」とは「真の勇者」と映画の中で語られて翻訳されているが、実はこの作品、1969年に邦題『勇気ある追跡』として製作されたジョン・ウェイン主演の西部劇のリメイクなのだそうだ。ちなみに、ジョン・ウェインはこの作品で念願の「アカデミー主演男優賞」を受賞したのだという。

 物語は1880年代、アーカンソー州フォート・スミスあたりでのこと。ヒロインの14歳の少女マティ・ロス(ヘイリー・スタインフェルド)は父親をトム・チェイニーという男に殺され、馬や金貨を奪われる。マティは父のかたきを討とうとそれに相応しい「真の勇者」を探し、連邦保安官の片目のルースター・コグバーン(ジェフ・ブリッジス)を金で雇おうとする。さいしょは問題にしないルースターだが、そのトム・チェイニーといっしょに自分も追っているネッドらもいることを知り、引き受けるのだったが、マティのもう一つの条件は「自分も同行すること」だった。しかもやはり彼らを追うテキサス・レンジャーのラビーフという男(マット・ディモン)も同行することになり、なかなかにいい馬を手に入れたマティと3人での探索行が始まるのだった。

 マティは父のもとで事務仕事を一手に引き受けていたらしく、法律などいろいろなことに詳しい。そして最高に生意気というか、口が悪いのだった。ルースターはけっきょく飲んべオヤジだし、ラブーフはどこか同行する目的が違うのか、2人についたり離れたり。
 それなりに事件も起こりながらの3人の道中は、けっこうコーエン兄弟らしいユーモアも含みながらも、緊張感を途切れさせずに進行する。
 ついには三者それぞれに追う連中に追いつきめぐり合い、いかにも「西部劇」らしい見せ場を用意する。ここでマティは自らの手でチェイニーを撃ちかたきを討つのだが、あることから「生命の危機」に直面する。そんな彼女を救うのはルースターなのであった。

 25年後、成人してもルースターの行方を捜していたマティはようやく彼の居所を突きとめるが、そこへ行ってみると、ルースターはつい3日前に病死したところだったのだ。ここにルースターがいた所として出て来るのが「Wild West Show」の一座の場で、もう時代は20世紀になっていて、「西部劇」の時代は終わったのだ。この「Wild West Show」は、先日観た『恐竜グワンジ』でも出て来たし、こういう見世物があったのは「史実」だし、この映画のように西部劇時代の無法者、コール・ヤンガーがこの「Wild West Show」に出演していたのも史実である(この映画でも、成長しても口の悪いマティに「クソ!」と罵られる)。

 面白かった。まずは主人公ら3人のキャラ立ちがいいというか、やはりジェフ・ブリッジスは「こういう飲んだくれがピッタリだろう」みたいなハマり方で、「もう今この映画を撮るならルースターの役はジェフ。ブリッジス以外にない」というところ。なんかわたしの好きな映画『ローズ・イン・タイドランド』でのジェフ・ブリッジスもこ~んな感じだった気がする。
 あと、マティを演じるヘイリー・スタインフェルドはオーディションで選ばれた子で、もちろんこの作品がデビュー作(ちなみに『勇気ある追跡』では、この役は懐かしいキム・ダービーが演じていたらしい)。誰もが想像するように、この作品でアメリカ中の映画祭で賞をい~っぱい受賞した。その後も活躍されているようだけれども、まだまだこれからの俳優さんだろう。

 「コーエン兄弟タッチ」としては、この映画はマジに考えると「み~んなウソっぱち」みたいな話で、妙にもっとリアルに撮っても逆に「そんなことあるわけないじゃん!」ってバレて、白けてしまうかもしれないし、それでこれ以上コミカルに撮ってしまうと肝心の「サスペンス」がボケてしまうことだろう。そのあたりのこの映画の演出の「いい塩梅」というのこそ、「コーエン兄弟タッチ」なのかな、などとは思うのだった。