ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『キャメラを止めるな!』(2022) ミシェル・アザナヴィシウス:脚本・監督(上田慎一郎『カメラを止めるな!』:原案)

 上田慎一郎監督の『カメラを止めるな!』は海外でも評判を呼び、なぜかこうやって、フランスのミシェル・アザナヴィシウス監督がリメイクすることになった。ミシェル・アザナヴィシウス監督といえば、2011年の『アーティスト』でアカデミー監督賞も受賞した名監督である。その『アーティスト』も、映画の世界が「サイレント」から「トーキー」へと切り替わる時期の俳優たちの「バックステージ」を描いたコメディーで、こういう「映画をつくるということ」を映画にするというモティヴェーションは、もともと持たれていたらしい。
 それで『カメラを止めるな!』において、映画の中の監督とその妻、そしてその娘が映画で重要な役割を担っていたところから、アザナヴィシウス監督の夫人も「俳優」のベレニス・ベジョであったわけで、彼女もこの作品にオリジナルでと同じような、「元女優の監督夫人」という役で出演、娘もまたオリジナルとおんなじ役で出演しているのだ。それは「リアル」だ。

 映画はおどろくほどにオリジナルの日本版を忠実に再現した脚本で、「そこまでに」とちょっとびっくり。「この場所は戦争中に日本軍が人体実験をやっていたという噂がある」っつうのまでそのままで、しかしオリジナルのロケ場所の茨城だかの「旧:給水施設」はそういう設定にピッタリだったが、このフランス版のロケ地は「元:ラウンジ」だったみたいな場所で、とても「日本軍が」などという設定に似合う場所ではない(そもそも、なぜフランスで「日本軍」が?)。
 どうも、そういう日本のオリジナル版を意識しての脚本・演出で、このフランス版の出演者の役名は、オリジナル版に従った日本名だったりする。

 その日本版オリジナルとけっこう異なるのが、冒頭30分の「本編ドラマ」が終わってからの「一ヶ月前」以降の展開で、これはオリジナルを観てもこのあたりのテンポがイマイチだったりしたわけで、「後発の強み」というか、ここで「フランスでのリメイク」の理由も盛り込まれたりして、軽快に進行する。わたしはオリジナルには登場しない、「音響」担当のアフリカ系の男、ファティがお気に入り。

 で、やはりココはベテラン監督の「手練れ」というか、笑うところでは観ながら「爆笑」させてもらった。ちょびっとずつオリジナルと異なるところもけっこう「お笑い」で、主役男優が「資本主義の弊害」を叫び出すなんて、さすがにフランスだ。