ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『パシフィック・リム アップライジング』(2018) スティーヴン・S・デナイト:監督

 第一作『パシフィック・リム』から十年後の世界で、異次元との通路が第一作で塞がれて以降、カイジュー(怪獣)は出現していなくって平穏な世界なのだが、それでもイェーガーの開発、パイロットの育成訓練は続いている。これはまたカイジューがあらわれるのではないかという不安からなのか、どこか今の世界の原子力兵器の開発を思わせられるところもある。
 世界のあちこちに巨大なカイジューの死んだ骨が見られ、『大怪獣のあとしまつ』みたいな問題は起きずにカイジューの死体は放置され、腐敗するにまかせられていたみたいだ。大変だっただろうな(まあ第一作のように死体の要所要所、特に脳髄などは回収されたのだろうが)。
 一方で第一作で破壊されたイェーガーもまた放置されていて、その部品を盗もうとする連中もうようよいるようだ(第一作ではカイジューの組織を盗む連中がいたわけだが)。そんな連中の中にアマーラという少女がいて、彼女はそんなイェーガーの部品を盗み集めて、小型のイェーガーを自作していたりする(そんなこと可能なのか?とは思ってしまうが)。

 そのアマーラ、そして第一作の英雄ペントコストの息子がイェーガーのパイロット育成の訓練を受け始めることになるのだが、このあたりの前半はほとんど「軍隊組織」の訓練の映画みたいなのだが、第一作に描かれた、イェーガーを操縦する2人のパイロットの「相性」ということはまるで問題にされず、奥行きが浅くなってしまった気がする。アマーラの幼少期の、家族がカイジューに襲われたというトラウマは短く描かれるのだけれども、これはまるで第一作の模倣でしかも表面的だった。

 まずは中国で「無人」イェーガーというものがつくられ、パイロット不要ということで期待されるのだが、この無人イェーガーが暴走し始めてしまい、従来のパイロット搭乗のイェーガーとの戦闘になる。
 これは第一作にも登場したニュートン博士が中国に協力して無人イェーガーを開発したのだが、実はニュートン博士はカイジューの脳を自分で所有して「コンタクト」を取っていたのだが、それで実は異次元(プリカーサー)の支配下の人間となってしまい、無人イェーガー設計に過去のカイジューの脳組織を挿入していたわけで、暴走した無人イェーガーは第一作で封鎖された「異次元との通路」をまた開いてしまう。
 開かれた通路はすぐにイェーガーによってふさがれるのだが、わずかのスキに3匹のカイジューが世界に侵入して来てしまう。ま、これからは「イェーガー対カイジュー」というこの「パシフィック・リム」本来のコンセプトの展開になるが、3匹のカイジューたちが集結するのは東京であり、その後富士山へと向かう。この映画では富士山は「活火山」で、山頂火口には溶岩が煮えたぎっている。カイジューの目的は富士山を大噴火させ、太平洋周辺の火山を誘発噴火させて人類を滅亡させる、というものらしい。

 前作第一作の監督ギレルモ・デル・トロから監督は代わっているのだが、やはり映画の演出というのは単にストーリーを紡ぎ合わせるだけでなく監督の「世界観」を表出するものでもあり、そういうところでは、この作品はやはり「平板」であったと言わざるを得ない。
 第一作に続いて、イェーガー同士の戦い、イェーガーとカイジューの戦いも迫力はあるのだが、ちょっと登場人物の背景のドラマが希薄なせいもあり、「これだったら<アニメ>にした方が楽しめるんじゃないかな」などとは思った。