ワニ狩り連絡帳2

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『地球の静止する日』(1951) ロバート・ワイズ:監督

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 ロバート・ワイズ監督というと、『ウエスト・サイド物語』や『サウンド・オブ・ミュージック』という名作ミュージカルを監督した「巨匠」というイメージだけれども、実は映画の世界では「音響効果技師」からそのキャリアをスタートし、その後編集技師となり、あの『市民ケーン』でアカデミー編集賞にノミネートされる。その後監督に抜擢されたあとも、主に「B級映画」を撮りつづけ、ついにはトップに昇り詰めたという、「立志伝中の人物」的なところがある人物だけれども、生涯SF映画への「こだわり」は持ちつづけた人だったという(Wikipediaによる)。

 この『地球の静止する日』も、ロバート・ワイズ監督の初期SF作品の「代表作」なのだろうと思う。ここでは、それまでの地球を攻撃する「侵略者」としての宇宙人ではなく、その優れた知性から、地球の人類に「正しい道」を選ばせようとする宇宙人の姿が描かれる。

 作品は冒頭からいきなり、ワシントンに宇宙からの飛行体が着陸し、その中から宇宙人とロボット(「ゴート」といい、その眼からの光線で、武器のみを消滅させるという力を持っている)とがあらわれる。ものすごい「単刀直入」な導入部で、開始早々にすでに映画はその「核心」へと突入する(上映時間わずか90分ではあるし)。

 実はその宇宙人クラトゥ(容貌は普通に「地球人」と変わらない)は、地球人に「宇宙平和」を説きに来た使者で、地球の指導者らとの会談を求めるが、拒否される。
 クラトゥは街の中、一般市民の中にまぎれ込み、世界をリードする科学者にちょくせつ会おうとするのだが、さてどうなるか?

 ひとつ面白かったのは、地球レベルで「ストレンジャー」としてあらわれて排除されるクラトゥも、市民レベルの「ストレンジャー」としてならば、すんなりと受け入れられるというあたりだけれども、これが「地球侵略」を目論む宇宙人ならば、彼はつまりは「スパイ」という位置づけになるのではないのか。
 この作品にしても、クラトゥはこのときのアメリカ人とは異なる価値観を持っている存在として描かれているとしたら、この映画のつくられた時代は戦後の冷戦時代の初期のことではあり、まさに「マッカーシズム」の拡がりつつあるときだった。
 そう考えると、つまり「クラトゥは<共産主義者>?」という読み取り方も出来るわけで、そういう意味でこの映画、よくも「非米活動委員会」の槍玉にあげられなかったものだと思ったりする。
 つまり、この作品で宇宙人クラトゥを<共産主義者>と捉えれば、彼の活動はまさに市民レベルでの「オルグ」活動、ということになる。この作品の脚本家は、そういうことは意識していたのではないか、とは思ったりするのだが。

 wikipediaのこの作品の項に掲載されていた、公開当時のポスターが楽しいので、ここにコピーしておこう(全然まったく、映画本編とは無縁な絵だが、ロボットが女性を抱いているということで、のちの有名な『禁断の惑星』のポスターにも影響を与えたのではないかと思える)。

       

 とにかくは<90分>で手際よくまとめられた作品、まずは楽しみたいとは思う。