ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『トレーニング デイ』(2001) アントワーン・フークア:監督

トレーニング デイ [Blu-ray]

トレーニング デイ [Blu-ray]

  • 発売日: 2010/04/21
  • メディア: Blu-ray

 この作品でデンゼル・ワシントンはアカデミー主演男優賞を受賞したとのことだけれども、もう20年も前の作品なのか。なんだかデンゼル・ワシントンって、もう何回も何回もアカデミー賞を受賞しているような気がしてしまうが。

 珍しくデンゼル・ワシントンが悪役で、麻薬取締課の悪徳刑事アロンゾをネチネチと演じている。そんな彼のところに新人刑事のジェイク(イーサン・ホーク)が配属されての一日。わたしは観ていて、こういう「ベテランの刑事のところに新人刑事が配属され、二人がいっしょに行動してみると新人刑事はそのベテラン刑事がとんでもない悪徳刑事だとわかる」っていう映画、ぜったいに観たことがあるなとは思ったのだけれども、何という映画だかどうしても思い出せない。それが後になって「あ、あの映画だった」と思い出したのが、2018年の日本映画『孤狼の血』(役所広司松坂桃李の出演)だった。外国映画ばかり考えていたから思い出せなかった。まあ、『孤狼の血』はこの『トレーニング デイ』ほどストレートなストーリーではなかったけれども。

 実はアロンゾは窮地に追い込まれていて、けっこう周到に新人のジェイクを自分の計画に引きずり込む計画を立てているわけで、それはジェイク就任最初の一日のうちに成し遂げられなければならない。だからいかにも映画向きな「凝縮された濃厚な一日」にはなる。
 アロンゾとしてはそのしょっぱなに「ガツン!」とジェイクにかまして、ジェイクを精神的に支配しようとするのだろうけれども、そんな冒頭のデンゼル・ワシントンの威圧的な演技と、それにのされて圧倒されるイーサン・ホークとの演技の対比がある。この二人の演技はずっと「対比」の関係をつづけるけれども、展開が変わるにつれてその対比も変化していく。前半と後半でのそれぞれ個々の演技の変化、対比というのもあるが、この映画で面白いのはそこ、ですね。
 映画の中で車中、運転席と助手席での二人の、動きではない顔の表情、セリフのやり取りだけでみせるシーンも多く、よけいにその対比が鮮烈になる。
 アロンゾ(デンゼル・ワシントン)はまずは威圧的に出て、以降先輩風を吹かせたり懐柔策をやってみたり、ついにはその凶悪な素顔をみせることになるという演技の見せ場もいろいろあるのだけれども、わたし的にはジェイク(イーサン・ホーク)の、前半の「やって行けるだろうか?」という不安げな、自信なさげな表情から、後半の「これは違う」となってから、まさに標的をアロンゾに絞っての、殺意をもにじませた凄みのある表情への変化こそが強烈だった。

 こういう、水準に達したアメリカのサスペンス・アクション映画というのはやはり、娯楽として楽しめるもので、ここでは余計なアクションではなくって「俳優の演技(というか、顔か?)」こそが見どころ、という作品だった。