ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『団地妻 不倫は蜜の味』(1999) 小林政広:脚本 サトウトシキ:監督

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 最初に劇場公開されたときのタイトルは『新・団地妻 不倫は蜜の味』で、のちにレイトショー公開されたときには『新・団地妻 不倫は密の味 今宵かぎりは…』となってややっこしい。1997年の作品『団地妻 白昼の不倫』の続編というか姉妹編というか、主演女優二人は葉月螢と沢田夏子と変わらず、姓は変わったけれども名まえの方は「朝子」と「友子」と変わらない。朝子の旦那さんは本多菊雄で『白昼の不倫』と同じだけれども、友子の旦那さんは村木仁に代わっている。他に、『白昼の不倫』ではゲスト的に長曾我部蓉子が出演していたけれども、今回は佐々木ユメカと久保田あづみが出演。

 団地のお隣同士の田向朝子(葉月螢)と岡田友子(沢田夏子)は、お互い子どももいないし仲がいい(旦那さんたちは最初は付き合いがない)。朝子の買い物からの帰り、友子と会う。友子は朝子の買ったものを見て「なに、今日はスキヤキ?」と聞く。朝子は「ええ、たまには亭主に肉喰わせてやろうと思って」と。
 夕食時、朝子は夫の圭司に「おいしい?それ、特上のロース肉なのよ」という。一方友子は亭主の新平とアジの開きで夕食。朝子の家はスキヤキだということを思い出し、くやしがるのである。
 次の日、また友子と会った朝子は「昨夜は3発もやっちゃったわよ」と話す。友子はまたくやしがり、新平に「今晩は4回やろう!」と。

 そういうことが縁になってか、夫同士、圭司と新平も朝の通勤の駅のホームで会って会話を交わすようになる。仕事のあとに二人で居酒屋に行くが、そこで明子(佐々木ユメカ)と礼子(久保田あづみ)のふたりが「相席させてもらっていいですか?」と来る。終電まで4人で飲み、その帰りに圭司と新平は連れションしながら「オレはあっちがいい」「おれはもう一人の方」とか話すのである。

 朝子と友子は、急にダンナ同士が終電までいっしょに飲んだりしたことにおどろくのだが、あの二人なら悪さはしないだろうということになる。
 しかし圭司の職場に明子から電話があり、二人はその夜ホテルに行ってしまうのである。実は圭司は礼子の方が好みで、新平の方が明子がいいと思っているのだが‥‥。そのことを新平に話をすると、新平は「家庭に波風を立てることはオレはやらない」という。

 しかししかし、しばらくして両夫婦は合同で温泉に行き、旅館に泊まるのだが、なんと新平はその旅館に明子と礼子を呼び寄せていたのである。

 と、実はこれからあとも実にいろいろとややっこしいことになるのだが、全部書いているとたいへんなことになってしまう。ただ、朝子にも友子にも今のダンナの前に付き合っていた男があって、それが今になって二人それぞれの前に姿を現すのである。ただ、友子の場合はオーディナリーな「再会」だけれども、朝子の場合は男は過去に捨てられた恨みを晴らすため、朝子の家に押し入って彼女をレイプするのである。
 こうして、圭司と礼子、新平と明子、友子と朝子は昔の男と、それぞれのセックスが繰り広げられる。だたひとりバッド・エンディングの朝子は、犯されて夜まで大の字に倒れたままだったのだが、起き上がって電気もつけないでご飯をつぎ、冷蔵庫からおかずを出して暗闇の中で「いただきます」と食事を始めるのだった。

 二組の夫婦の、何とものほほんとした始まり方をする作品なのだけれども、『団地妻 白昼の不倫』での、「不倫」になだれ込みそうでそうならないという展開とちがって、もうズブズブのところに行ってしまう。はたしてこれをのほほんと「蜜の味」などと言えるのかどうか。そのことをバッドな展開になった葉月螢の話がスパイシーでシニカルな味付けになってもいるだろうし、男二人の「幼稚さ」、それに対して明子と礼子の「したたかさ」が対照的だ。

 相変わらずサトウトシキの演出はキリッとしていて見ごたえがあり、特に通勤電車からの東京近郊の風景とかに、通勤する勤め人の目線も感じられる。
 音楽はこの小林政広サトウトシキコンビのいつもの山田勳生で、いつも味のあるシンプルな音楽を聞かせてくれるわけだけれども、今回は通奏低音を入れたバグパイプの音を模した音楽で、これはキーボードで演奏していたのだろうかと思うけれども、わたしはとっても気に入ってしまった。