ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ザ・ウォード/監禁病棟』(2010) ジョン・カーペンター:監督

ザ・ウォード 監禁病棟 [DVD]

ザ・ウォード 監禁病棟 [DVD]

  • 発売日: 2012/03/02
  • メディア: DVD

 「あのジョン・カーペンターの監督作品だ!」などと思っても、わたしの場合、記憶障害もあって、カーペンター監督の過去の作品をな~んにも思い出すことができない。それで現在のところ、この『ザ・ウォード』がカーペンター監督の「最新作」ということらしい。というか、もう10年も新作を撮っていないのか。

 だから、「カーペンター監督の作品だから」とかどうのこうのとかいうのではなく、ただ虚心に映画を観る。とにかく、「絵」がカッコいい。これは「ドラマ」を見て行く作品というよりも、ヴィジュアル的に観て行った方が良さそうだと思う。
 タイトルからして「The Ward」(病棟)なわけだし、冒頭のタイトルバックの写真からも、これは精神病棟を舞台とした映画なのだと想像がつく。そういうところで、薄暗い閉鎖空間の撮影、特にくり返し映し出される病棟内廊下の一点透視的な絵が、その画面内の消失点の奥にヒロインの目指す「自由な世界」が存在することをヴィジュアル的に示していただろう。

 ただどうも、そういう「精神病棟」内での展開で、ストーリーがヒロインの視点から描かれるとなると「何でもあり」というか、まあだいたいはそのヒロインの「妄想」からのストーリーが描かれるのであろうことは想像がつく。まあ観ていても「どうにでもして下さい」みたいな感じというか。
 それで時制が「1966年」ということで、その当時は精神疾患治療もかなり乱暴だったわけで、この映画でも「電気ショック治療」なんか平気でやっていて、「病院側」=「悪」みたいな刷り込みが得られやすくなる。看護婦は三白眼でにらみつけてきて怖いし。

 まあ普通に観ていても、そもそもヒロインは「放火」の罪もあってその病棟に収容されているわけで、冒頭にはその放火のシーンも描かれている。病棟内の描写ではヒロインこそは健全、正常な人物のように描かれてはいるけれども、「じゃあさいしょの<放火>はなぜなんだ?」という疑問はついて回ることになる。
 これらの<理由>は終盤にちゃっちゃっと説明されるわけだけれども、それで「そうだったのか」というカタルシスが得られるというよりは、やはりこの映画の描きたかったのはまさに病棟内の「異常な世界」こそであって、「実はこれこれしかじかのストーリーだったんだよね」ということで「一件落着」してしまうのではつまらないだろう。まあ演出面でも「これで一件落着ではないよ」というエンディングは用意してあるのだけれども。

 ただやはり、映画としてはこじんまりとまとまってしまっていたというか、「これがあのジョン・カーペンターの作品だ!」というインパクトはさほどに受け取れなかったのは残念だった。