ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『そこのみにて光輝く』(2014) 佐藤泰志:原作 呉美保:監督

そこのみにて光輝く 豪華版DVD

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  • 発売日: 2014/11/14
  • メディア: DVD

 1990年に41歳で自殺された佐藤泰志氏の原作からの映画化。やはり佐藤氏の原作から映画化された『海炭市叙景』は良い映画だったし、その他にも佐藤氏の原作から映画化された作品もあるという。また、この作品は2015年の「キネマ旬報ベストテン」1位になったという。呉美保監督の名前は知っているし、過去に彼女の作品を観たこともあったのではないかと思ったが、彼女のフィルモグラフィーを見ても思い当たる作品は見当たらなかった。

 実はわたしはこの作品にも菅田将暉が出演していることがあり、映画中盤でのクライマックス的な海でのラブシーン、そして事件が起きる終盤の「祭り」のシーンなどから、しばらく前に観た『溺れるナイフ』を思い出さないわけにはいかなかった。

 この『そこのみにて光輝く』に関していえば、こんなことをいってはアレだけれども、「映画としての<新しさ>が感じられない」というか、「こういう日本映画って過去にあったよね」という感想が先に浮かんでしまう。貧困と無為、そこからさいごに浮かび上がる「希望」、なんだか既視感にあふれる感覚で、「新しい種類の映画を観た」という感慨がない。
 そういうところではどうしても、『溺れるナイフ』を観た感銘が今なおわたしの中に残っている。
 『溺れるナイフ』はこの『そこのみにて光輝く』のあとの2016年の作品であり、今こうやって思い返すと、『溺れるナイフ』の山戸結希監督は、この「『そこのみにて光輝く』を越えてやろう」という野心もあったのではないのかと思ってしまうし、わたしの思いでは、その野心は報われているのではないかと思うのであった。