ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『寝ても覚めても』(2018) 柴崎友香:原作 濱口竜介:監督

寝ても覚めても [DVD]

寝ても覚めても [DVD]

  • 発売日: 2019/03/06
  • メディア: DVD

 大阪にいたヒロインの朝子は、牛腸茂雄の展覧会を観た帰り、同じ展覧会場にいた麦(ばく)と出会い、つきあうようになるが、ある日麦は唐突に姿を消してしまう。その後東京に出て喫茶店に勤める朝子は、近くの会社に勤務する、麦に生き写しの亮平という男と出会う。朝子はおどろくのだが、亮平のことを避けようともする。亮平は朝子の「自分に興味がありそうな」「それでいて自分を避けようとする」態度に興味を持つ。ここでも牛腸茂雄の展覧会が契機となったりして、朝子と亮平は交際するようになる。朝子は亮平に麦にはなかった「やさしさ」を見て愛するようになり、いっしょに暮らすようになる。
 6年経って、亮平と朝子とは亮平の転勤で大阪へ転居する準備をしていた。そんなとき、麦は「モデル」としてあちことにその顔の露出する有名人として、朝子の知るところとなった。麦も朝子のことを忘れていたわけではなく、朝子のことを探し当て、亮平や友人らもいる席に突然現れ、「待たせたね、いっしょに行こう!」と、強奪のように朝子を車で連れ出すのだ。しかも朝子は麦に従ってついていき、追ってきた友人に「もう連絡してこないで!」ともいわれたのを振り切り、ケータイも車の外に投げ捨てる。
 麦の車の中で眠っていた朝子はとつぜんに「ここまででいい」と麦に言い、麦と別れて亮平のもとへと戻るのだ。いちどは拒絶する亮平だが、「もう(これ以降)おまえのことは信じないから」と言いながらも朝子を受け入れるのだ。
 あっ! ストーリーを結末までぜんぶ書いてしまった。

 原作は芥川賞も受賞した柴崎友香だけれども、わたしはなぜかこの人の作品は何ひとつ読んでいないし、正直なぜか、読もうとも思っていなかったりする。
 まあ小説というものは単にそのストーリーだけではなく、文体とかコンセプトなども合わせて読まなければ判断できないのだけれども、この映画がどれだけ原作のテイストを活かしているかはわからないが、こういう映画の原作はそれほどに読んでみたいと思うわけではない。

 映画はやはり(ちょっと特異な)ラヴストーリーではあり、おそらくはこの映画を観た人はヒロインに感情移入できるかどうか、大きく分かれるのではないかと思う。というか、今思ったけれども、こういう、「今は優しい恋人と幸せな生活をしているけれども、そこに過去の<自分を振り回して翻弄した>恋人が現れ、今の恋人には何の不満もないのに過去の恋人のもとに走ってしまう」という小説だか映画だかが、過去にあったように思う。ああ、それはセックスが重要なファクターだったような作品だったかな。ひょっとしたら「ピンク映画」だったかもしれない。
 そういう意味で、この映画にはベッドシーンというものが皆無だった。勝手なことを書けば、この作品に「セックス」ということがひとつのポイントとして出てくれば、ものすごくわかりやすかったことだろうと思う(ただし、映画としては「R18指定」とかになっちゃうだろうけれども)。

 監督の濱口竜介という人は今注目されているようだけれども、この作品を観た限りでは、「ここぞ!というときに望まれる通りの演出をやってこます監督」という印象を受けた。おそらくは絵コンテがしっかりしてるんだろうが、この「優等生」というところを抜けたところこそを観てみたい気がする。

 どうでもいいことだけれども、映画の中に朝子と亮平が飼っているというネコが登場し、これが朝子と亮平といっしょに車で遠出してから家に帰って来るというシーンがあったのだが、ネコにとっては「自分の棲み処」という設定の部屋なのに、バスケットから出されたネコは「ここはいったいどこよ?知らないところだなあ」という反応なので笑ってしまった。ネコは正直だ。