ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ルーム』(2015) レニー・エイブラハムソン:監督

ルーム スペシャル・プライス [DVD]

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  • 発売日: 2018/02/02
  • メディア: DVD

 エマ・ドナヒューという人の『部屋』を原作に、エマ・ドナヒュー自身が脚本を担当しての映画化。製作はカナダとアイルランド、そしてイギリスなど多国籍。海外ではこのようなケースが非常に多い。

 ジョイ(ママ)は5歳のジャックといっしょに狭い「へや」で生活している。ジョイは7年前に男に誘拐・拉致監禁され、レイプされてジャックを出産し、以後もいっしょに「へや」の中だけで暮らしているのだ。つまり、ジャックは「へや」の外の世界をじっさいには知らない。見ることができるのは「へや」の天井にある小さな「天窓」の外の空と、「へや」に置かれているテレビで見られる世界だけ。ジョイはジャックに「天窓」の外やテレビの中の世界は「宇宙の世界」なのだと教え、狭い室内でジャックの身体鍛錬をコーチする。監禁者は週に一度の「差し入れ」でジョイらの必要なものを与えている。
 ジョイは「ジャックが病気で死んだことにすれば監禁者は死体を外に捨てようとし、助かるチャンスがあるのではないか」と思いつき、ジャックに「死んだふり」をさせ、外に出たときに誰かに助けを求めることを覚えさせる。
 その作戦は成功し、ジョイとジャックは解放される。ジョイにとっては7年ぶり、ジャックは生まれて初めての「外の世界」。
 ジョイの両親は離婚してしまっていて、母は再婚している。解放されたジョイに会うために実父もやって来るが、父は別れるまでどうしてもジャックのことをまともに見ることができず、ジョイをいらだたせる。母の再婚相手の優しさもあって、ジャックはだんだんに「外の世界」に心を許していくが、ジョイはマスコミの心ないインタヴューに傷つき、自殺未遂に追い込まれる。全快したジョイはジャックとの絆を強め、ジャックの願いからふたりが監禁されていた「へや」に、ふたりで訪れるのだった。

 ジョイを演じているのはブリー・ラーソンという人なのだが、その抑えた演技の魅力でアカデミー主演女優賞を受賞している。そしてジャックを演じているのはジェイコブ・トレンブレイという子で、じっさいにはこの映画撮影時は8歳か9歳で、映画を観てもその背丈とかとても5歳には見えないのだけれども、そのか細い「声」とかその「目線」で「幼さ」を感じさせられるし、とにかく「かわいい」子でもあり、この映画の成功の要因はジョイのブリー・ラーソンと、このジェイコブくんとの力によるものが大きいだろう。

 ふたりが監禁されている前半では、その「へや」の中の「薄暗さ」と、ジャックの視線になったカメラの見る「外界」が印象に残る。特に「脱出」のシークエンスは観ながらも心締め付けられる好演出でもあるけれども、ジャックが初めて見る広い青空とかの描写が印象に残る。
 監禁されたふたりがその「へや」から脱出して、解放されるまでで終わらせるのではなく、ジョイが「世界の軋轢」に耐え、ジャックが初めて体験する「外の世界」を受け入れて、ジョイとジャックがいっしょに生きていく自信、希望を得るまでを描いたことも良かった。

 ラストにその監禁された「へや」、実は小さな納屋の全貌が写されるのだけれども、そのあまりの小ささ、狭さにはおどろかされる。「世界とは」ということを考えるよすがにもなる、好作品だったと思う。