- 発売日: 2012/02/24
- メディア: Blu-ray
原題は「Mein bester Feind」で、Googleで翻訳してもらうと「私の最高の敵」というのだ。
1930年代までウィーンで隆盛を誇っていたギャラリーの、そのオーナー家族はオーストリアの第三帝国編入によってユダヤ人だったゆえに収容所に送られる。ギャラリーを引き継いだのはギャラリーを手伝ってオーナー息子と仲良くしていた男で、ナチスのSSの一員になっている。
そのギャラリーのオーナーはナチスにギャラリーを乗っ取られる前に、ミケランジェロの未発見だった作品(デッサン)を発見、所有しているとし、その作品のコピーを2作つくらせているわけね。とにかくはホンモノとコピーひとつは隠している。
ギャラリーを乗っ取ったナチスは、そのミケランジェロの作品を鑑定させるのだが、「こりゃあ贋作だ」という鑑定結果になる。それで、ギャラリーを引き継いでいるナチスSSの男が、まあ旧友だったギャラリーオーナー息子を収容所から連れ出し(オーナーはすでに収容所で亡くなっていた)、「ホンモノのミケランジェロはどこ?」と迫り、調査をはじめるわけだけれども。
それが、ナチスSS男とギャラリーオーナー息子ふたりを乗せた飛行機が墜落して、生き残ったギャラリーオーナー息子はやはり大けがをしても生き残ったナチスの旧友と服を交換し、以降は自分こそナチスSSであるということで行動する。まあこれからいろいろとあるわけだけれども、つまりはこのユダヤ人ギャラリストとナチスSSとが、いろんな状況の変化から「彼はナチスSSだ」とか「こいつがユダヤ人だ」とか、お互いの駆け引きでその立場がコロコロと変わっていくのだ。
ここに収容所から生き残っていた母も連れ出され、ギャラリーオーナー息子の恋人だったはずなのにナチスSS男と婚約した女性も加わり、さらに状況は変わっていく。
ナチス崩壊前、ナチスSS男はギャラリーオーナー息子を脅迫してギャラリーのすべての作品を自分のものにする。そのギャラリー所蔵作品のどこかにミケランジェロの幻の作品もあるはずなのだが。
まあ邦題にある「暗号」などというものは映画の中でこれっぽっちも出てこない。出てきたかもしれないけれども、まるで重要な役割は果たさないわけで、この邦題はかなりミスリード。
映画は原題通りに、ふたりの男の反目とちょっとばかりの友情、その裏切りが核になっているわけで、当時の政治的、社会的背景もそのエンタテインメント性を成り立たせる背景以上のものではない。幻のミケランジェロの作品も、ただ「お宝よ~」という以上にどうこういう意味合いも持たないわけだけれども、ネコの目のようにクルクル変わっていくふたりの男をめぐる状況は楽しめる。しかし、元ナチスSS男も、ずっとギャラリーを手伝っていたのだったら、「ミケランジェロの作品はどこ?」ということでもうちょっと推理をはたらかせたべきだろう。そんなに意外な隠し場所でもなかったのだから。
ギャラリーオーナーの息子を演じた俳優は「この人、見憶えがあるな」と思ったのだが、モーリッツ・ブライプトロイという人で、わたしは『ラン・ローラ・ラン』とかで彼のことを覚えていたのだ。ドイツでは人気のある俳優さんらしい。