ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ジャッキー・コーガン』(2012) アンドリュー・ドミニク:脚本・監督

ジャッキー・コーガン(字幕版)

ジャッキー・コーガン(字幕版)

  • 発売日: 2014/10/01
  • メディア: Prime Video

 原題は「Killing Them Softly」で、このタイトルだとどうしてもロバータ・フラックの大ヒット曲「やさしく歌って(Killing Me Softly with His Song)」を思い出してしまうのだけれども、この映画は特に「ヤツらをやさしく殺す」わけでもなく、普通にバンバンと撃ち殺してしまうのだ。

 監督はアンドリュー・ドミニクということで、「どこかで聴いた名前だ」と思ったら、あの『ジェシー・ジェイムズの暗殺』の監督なのだった。それは期待するところが大きい。

 映画はアメリカ大統領の選挙戦、2008年のオバマの勝利した年のオバマの選挙演説とダブらせながら進行する。「マフィア」とまではいかないけれども「闇組織」に雇われたジャッキー・コーガンという男(ブラッド・ピット)が、その仕事を遂行し終えるまでを描いたもの。
 まずはその闇組織が動くのは、組織と利害関係が強いらしい賭場が強盗に襲われたことによる。この強盗計画はクリーニング屋か何かにいる中年男「リス」が黒幕で、ふたりのチンピラ、フランキーとラッセルとに実行させる。この、「リス」とふたりのチンピラとの対面シーンがまずおかしい。フランキーは気が小さそうだし、イヌ泥棒で生計を立てているラッセルはヤク中で減らず口ばかりたたく。「こんなんでちゃんと強盗とか出来るんかいな」という感じなのだが、こんなふにゃふにゃ二人組でもうまくいっちゃうからおかしい。
 それで「闇組織」の登場だけれども、組織からの指令がすべて車のドライヴァー(リチャード・ジェンキンス)を通じて指示される。ほんとうはディロン(サム・シェパード)という中堅どころがこの役にあたるはずだったが、ディロンは病気で代わりにジャッキー・コーガンが事にあたる。
 ジャッキーはすぐに強盗犯と首謀者を割り出すのだけれども、首謀者に顔を知られているのでニューヨークからミッキーという殺し屋を呼び寄せる。ところが呼び寄せてホテルでミッキーに会ってみると、コイツがアル中の飲んだくれで役に立ちそうもない。で、ミッキーはアテにしないことにしてけっきょく、ジャッキー自ら「始末」にあたるのである。

 けっきょく、観終わってみると登場人物らのしょ~もない会話を楽しむ映画だったというか、タランティーノの映画に女の子たちがくっだらない会話を延々とつづけるのがあったと思うけど、まあ「似てる」とは言わないけれども、こっちはもうちょっとダラけたというか、「こんなんでコイツら本気(マジ)なのかよ?」みたいなところはある。
 いちおう、ジャッキーとドライヴァーとの対話だけはマトモなビジネスの話なのだけれども、その外の世界はみ~んなダラダラであるというか。
 それで、そのジャッキーとドライヴァーとの対話を含めて、「クルマの中」での会話シーンがやたらに多い(殺しのシーンもすべて「車」の中とかそばでだし)。ずっと閉所でのシーンがつづき、それがようやっとジャッキーがミッキーとホテルで会うシーンでホテルの広い室内になり、見てる方でも背伸びをしたくなってしまう。

 「面白かったか、面白くなかったか」といえば、ビミョ~に面白かったかな、という答えになるのだが、例えば殺しのシーンで銃弾が銃口から超スローモーションで飛びだす場面だとか、何とも今どき安っぽい演出だなと感じてしまったのはたしか。
 面白かったのは、ヤク中のラッセルが部屋でヘロインをきめるシーンがあるのだけれども、ここは映像的には大したことなかったが、バックに「あれれれ、この音は?」というのはヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「ヘロイン」で、「まんまやん!」ではあるのだけれども、そのイントロの部分にラッセルのセリフがかぶさってくるとき、それがしっかり「ヘロイン」の曲にハマっていて、まるでルー・リードが歌い始めたみたいだった。ここはすばらしかったな。
 エンドクレジットを見ていると、「Special Thanks」としてハル・ウィルナーの名前があり、この監督の人脈が見て取れるように思った。