ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『なまいきシャルロット』(1985) クロード・ミレール:監督

なまいきシャルロット [DVD]

なまいきシャルロット [DVD]

  • 発売日: 1999/01/25
  • メディア: DVD

 さいしょのタイトル部の映像が何だかわからなくって、「何だろう?タイプライター?」とか思っていたら実はジュークボックスのターンテーブルのところで、60年代っぽいフレンチ・ポップスが流れてくるところから気もちがいい。映画は特にジュークボックスの時代のものではなかったし、意図的なアナクロニズムだろう。

 13歳のシャルロット(シャルロット・ゲンズブール)は父と兄との3人家族。母はシャルロットの生まれたときに亡くなっていて、レオーヌ(ベルナデッド・ラフォン)が家事手伝いで毎日通ってきていて、彼女がほとんどお母さん代わりである。シャルロットのところに、近所のルルというおチビさんの病気がちの女の子が泊まりにくることがよくあるみたいだ。シャルロットはルルに意地悪だったりするけれども、けっきょくこの二人、いい友だちみたい。
 ある日シャルロットは学校で、別のクラスの皆が視聴覚教室(?)で、クララという13歳の天才ピアニストのコンサートの映像を見て(聴いて)いるのを教室の外から覗き見していて、先生にみつかって「中で見なさい」と招き入れられる。クララが自分と同い年だということに感銘を受けるのだが、夏休みに入った日に街角で偶然、クララの乗った車に道を聞かれてしまう(このときクララといっしょなのが、クララのマネージャー役のジャン=クロード・ブリアリ)。クララはコンサート用の椅子の修理に町の旋盤工場へ行くところだった。
 シャルロットはその旋盤工場へ行き、そこで働くジャンと知り合って、出来上がった椅子をクララの邸宅に届けるのに同行させてもらう。クララの邸宅の中でシャルロットはクララと会うことができ、「わたしの<付添い人>になってよ」と誘われ、その夜のパーティーにも参加してしまう。シャルロットはすっかり付添い人になるつもりになってしまうのだが。

 13歳、背伸びしたい盛りの思春期の一時期、自分の知らない世界へ飛び立ちたいという心情が、どたん場で自分の足元の世界の大切さに気づくという少女の<成長譚>だけれども、脚本が過不足なくピタッと決まっている感じで、うまくツボを押さえた映像からも、96分が小気味よく過ぎていく。
 そもそも、教室のテレビ画面に映るクララがアップの映像になるとき、クララがカメラ目線でにっこりと微笑むのだが、その微笑みがまさに、シャルロットに向けられた微笑みと演出されているあたり、心憎いものがある。
 印象的なシーンの多い作品だが、やはりシャルロットとレオーヌ、そしてルルの3人での庭園でのピクニックのシーンが心に残る。このシーンこそが、ラストにシャルロットが「自分の足元」として認識する<原点>なのだろう。
 ジャンとの、映画館で『エクソシスト』を観てからの「それ、危険だよ」というデートもまた、「自分の知らない世界」とは「危険な世界」でもあるとの認識になるだろう。
 実はこのシーンに出てくる「照明になる地球儀」というものをわたしも持っているのだが、ずいぶん前に高いところから落としてしまって、ライトが点かなくなってしまっているのだ(この地球儀で殴られた体験はないが)。

 中学生ぐらいの女の子たちに、皆に見せてあげたいような映画だと思ったけれども、日本ならこういう題材の少女マンガというものがじっさいにありそうに思う。