ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ギャラリー 欲望の画廊』(2009) ダンカン・ウォード:監督

 原題は「Boogie Woogie」で、これは作品中で登場するピエト・モンドリアンの作品題名。でもモンドリアンには「Broadway Boogie Woogie」という作品はあるだろうけれども、ただの「Boogie Woogie」というタイトルの作品はないと思う。映画の中にその「Boogie Woogie」という作品も映されるけれども、それはモンドリアンのほかの作品をカットしてひし形にしたものだと思った。

 まあ物語はロンドンのさまざまなアート蒐集家、ギャラリスト、そしてアーティストらの繰り広げる「えげつない」話、なのである。
 そのモンドリアンの作品を買いたいギャラリー、蒐集家、売りたくない所有者(クリストファー・リー)、売ってしまいたいその妻、その妻とグルになっている執事(わたしは久々に見るサイモン・マクバーニー)をめぐる話、そして美術コレクター夫婦が離婚するときに収集した美術作品をどうするかとかいう話(この奥さんの友だちで、彼女にアドヴァイスする役でシャーロット・ランプリングがちょこっとだけ出演している)は、古典的なよくあるような美術コレクターらのコメディーというかたちだけれども、それ以外のギャラリスト、コレクター、アーティストらの話はけっこうガチにコンテンポラリー・アートの世界の話で、「たしかにそういう話はアートの世界ではあるよな」というところをけっこうシビアにえげつなくもブラックに、まさに「コンテンポラリー・アート」っぽく描いていて、わたしはけっこう面白く観ることができた。
 この面白さは、そのすべての逸話を細かく書いていかないと伝わらないとは思うのだけれども、とっても長くなってしまうのでやめておく。ただ、日本でこの作品が劇場公開を見送られたのは(DVDでは発売)、ある程度観客にコンテンポラリー・アート、その背景の基礎知識が必要だからだっただろうか。

 あと、お楽しみとして様々な美術作品が姿を見せてくれることで、まあここはこの映画の「アート・キュレータ―」がダミアン・ハーストだったところからも彼のセレクションなのかもしれない。彼の初期の円形の作品も登場し、映画の中で大物ギャラリストが開催する展覧会はダミアン・ハーストの個展で、彼の新作がいっぱい。そしてダミアン・ハーストといえば「これよ!」というホルマリン漬け作品も、この映画のための「オリジナル(?)」を観ることができる。
 ハースト以外の作品も山ほどで、フランシス・ベイコンだとかウォーホルだとか、「あああ、この作品の作者は誰だっけ?」と、すぐには思い出せない作品もあれこれと。まあわたしには、そういう作品群を観ていることも「楽しみ」ではあった。わたしはこの作品のDVDを買ってもいいな。