ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『天使のはらわた 赤い教室』(1979) 石井隆:原作・脚本 曽根中生:脚本・監督

天使のはらわた 赤い教室 [DVD]

天使のはらわた 赤い教室 [DVD]

  • 発売日: 2007/06/22
  • メディア: DVD

 どうもこのところ、「GYAO!」には日活ロマンポルノの名作があれこれとアップされていて、まだまだ観たい作品がゴロゴロと転がっている。とりあえずは「無料配信」の停止が近づいた作品から観ることにして、今日はこの『天使のはらわた 赤い教室』を選んだ。

 わたしは石井隆が自ら監督をやるようになってからの作品はいくつか観ていたが、ストーリーの記憶はないとはいえ、そのヒロインの名前がかならず「名美」であり、対する男の名前はいつも「村木哲郎」なのだということは記憶に残っていた。この『天使のはらわた 赤い教室』は石井隆の作品の映画化としては2本目で、脚本も書いたのはこの作品が初めてらしい。

 この作品、時代設定として8mmのいわゆる「ブルーフィルム」というものがまだ裏世界で観客を集めていた時代、そしてまだハードコアではない「ビニ本」がさかんに製作され、売られていた時代なわけだけれども、冒頭でその「名美(水原ゆう紀)」の出ているブルーフィルムを観た「エロ写真集」製作会社の村木(蟹江敬三)はつまり名美にはげしく惹かれ、彼女をさがすのである。
 やっと彼女を見つけた村木は翌日まら彼女と会って、彼女と新しい生活をはじめようと思うのだが‥‥。
 なんだか、ちょっと気恥ずかしくなってしまうような「青い」話ともいえるのだけれども、名美の方は地獄から救われる気もちではあったような。それで三年後、村木は前から付き合っていた女性と結婚して子どもも産まれている。泥酔した夜、場末のバーで「寄っていかない?」との誘いの声をかけられるのだが、それが名美だった。

 これは、おそらくは多くの男の持つ「もう取り返しはつかない」という悔恨の気もちというか、「自分が失ったものは何だったろう」という心情吐露だろうけれども、しかしその内面を決して明かさない名美の「絶望」はもっともっと、底知れずに深いものだったろう。
 そういうところでこれは「男」の映画のようにも見えるのだが、それは「オレはどれだけあの女を欲したことだろう」ということ、「オレが逃したものは何だったのだろう」、そして「オレは何て罪つくりな男だったことだろう」という自己憐憫なのだが、ラストの名美の映像で、そんな自己憐憫などというものがいかに情けないものであるかが知らされる。そこには「同情」などというものをはね捨てるハードボイルドさがある。それを、水原ゆう紀という女優さんのときどき垣間見せる虚無的な表情でけん引していく。
 曽根中生という人の演出は意外と「縦の構図」を多用していて、久しぶりにそういう構図の絵を見せられると、やはりグッとくるものがあった。