原題は「Directed by John Ford」で、映画監督デビュー間もないピーター・ボグダノヴィッチによって、まずは1971年に完成された。ボグダノヴィッチはこれに先立って1967年にジョン・フォードへのインタビューによる本を出版していたという。
予算不足などから、その1967年版に不満を感じていたボグダノヴィッチは、クリント・イーストウッドらへのインタビューなどの新たな映像を加えた再編集版を作製したという。
この作品は日本では一般公開されていないだろうし、ソフトもリリースされていないのだが、どうやらどなたかがBS放送で放映されたものをYouTubeにアップされていて、そのヴァージョンを観ることが出来た。
この作品に出演してフォード監督にオマージュを捧げている映画監督は、先にあげたクリント・イーストウッドをはじめ、マーティン・スコセッシ、スティーヴン・スピルバーグ、そしてウォルター・ヒルというメンツ(わたしはウォルター・ヒル監督を見るのは初めてだったので、最初は誰なのかまったくわからなかった)。あとはオーソン・ウェルズによるインタビュー音声が使われていた。
俳優陣は「もちろん」のジョン・ウェイン、それにヘンリー・フォンダ、ジェームズ・スチュワートの主役陣をはじめ、モーリン・オハラ、ハリー・ケリー・JRら、そしてジョン・フォードと終生友情(以上のもの?)で結ばれていたというキャサリン・ヘプバーンとの、ジョン・フォードの臨終の病床での逢瀬の録音テープも流されていた。
まあボグダノヴィッチが直接インタビューした際のジョン・フォードはぶっきらぼうで素っ気ないのだが、その独特のユーモア感覚は楽しめた。
さまざまなフォード作品からの引用で彼の演出の手法を解いていくさまは興味深く、「そういう見方が出来るのか」とも思ったし、まだ観ていないジョン・フォードの作品を観てみたくもなった。
例えばわたしなども「面白い演出だ」と思ってみていた、『荒野の決闘』で椅子に座っていたヘンリー・フォンダが、足を目の前の柱に交互に上げるシーンなど、ヘンリー・フォンダ自身から、ジョン・フォードにどのように演出されたかが語られたりもした。
映画作家を取り上げた伝記的なドキュメンタリーは多いが、その映画製作の手法をも解いたドキュメンタリーとして、さすがにピーター・ボグダノヴィッチのシネフィルらしい一面が前面に出された作品だと思った。