共同監督のイワン・イワノフ=ワノという人は、ノルシュテインのお師匠さんであり、『せむしのこうま』や『森は生きている』などの演出で知られる名匠で、つまりこの作品は師弟での共作というかたち。どうもノルシュテインの第一作『25日・最初の日』に感銘を受けたワノが、ノルシュテインに声をかけての共作になったようだ。
テーマは十世紀のロシアとタタールとの戦いというから、まさに先日観たタルコフスキーの『アンドレイ・ルブリョフ』で描かれた時代、世界でもあり、しかもこの作品ではイコン画が大きなモティーフになっている。
そういうわけでこの作品の「どの部分がノルシュテインだろう」などということは言えないのだが、『25日・最初の日』と共通するのは群像の描き方、そして高速でスクロールするスピード感などではないかと思う。
のちのノルシュテインの作品とのことで考えれば、「切り絵」という手法で貫いたあたりにノルシュテインらしさがあるのだろうか(ワノ監督は「人形アニメ」での制作を主張したらしいが、ノルシュテインが「切り絵」でやることを主張したという)。
色彩、明暗の対比の美しい作品だという印象。